IT企業元役員がなぜ「草むしり」を仕事に?ネット業界の知見を活かした新たな植木業
お客さんに直接「ありがとう」と言われる喜び
植木業の依頼主は高齢者も多く、植木以外の簡単な依頼を引き受けることもある。 「郵便ポストのぐらつきとか、玄関灯の交換とか、できることの範囲は限られますがちょっとしたことなら相談に乗るようにしています。これがすごく感謝されるんですよ。 この仕事を始めたおかげで、お客さまのことをより身近に感じられるようになりました。インターネットは顔が見えない世界ですからね。 自分が対応した案件が役立っていることをダイレクトに感じることができて、大きなやりがいにつながっています」 プラットフォームの自己紹介文では経験が浅いことをしっかりと明記し、そこに興味を持ってもらったユーザーから依頼が来る。“懐に入るのが上手い”と周りから評される持ち前のコミュニケーション力を発揮して実績を積み上げ、リピーターも増えてきた。同時に、植木業の需要の高さを実感しているという。 「会社員時代、六本木ヒルズに勤めていた時はオフィスのある39階から毎日階段を下ったり、いくらダイエットをしても全然痩せなかったのに、植木の仕事を始めたら、あっという間に6キロのダイエットに成功しました(笑)。 体を動かすと、考え方がポジティブになるんです。植木の仕事は朝が早いし、車移動が多いので、必然的にお酒もほとんど飲まなくなりました。今のほうが忙しいのに、今のほうがずっと健康です」
「楽しそう」から始まる事業にも価値あり
現在の社名「Integrasol」は、同社の5つのコアバリューの中から「誠実・品位(Integrity)」「結束・団結(Solidarity)」の2語を掛け合わせた造語だという。 「会社員時代は成果を出すことに集中し、がむしゃらに働いていました。その努力が評価につながりましたが、心から充実していると感じることは少なかったです。 今の一番の喜びは、お客さまやビジネスパートナーに誠実に向き合い、感謝されて、お互い幸せになること。働くことの意義が、稼ぐことからやりがいへと大きく変わりました」 今も同僚とは「楽しいことをやろう」とアイデアを出し合っているという。植木業に加えて、レンタルサウナ事業も開始した。 「コロナ禍に時間があったので食品衛生責任者の資格を取得しました。飲食業も気になっています。 インターネット業を強みとする僕らがやる価値を乗せられれば、“楽しそう”も十分価値になると思います。 今大事にしたいのは、何をするかよりも“誰と”何をするか。1回きりの人生だし、もともと飽きっぽい性格なので、フットワーク軽く色々なことにチャレンジしたいですね」 梶野剛(かじの・ごう)さん/2001年、新卒で広告代理店入社。デジタル広告の黎明期からプランニングからレポーティングまで一貫して経験。2011年に外資系プラットフォームで大手法人媒体社向けアドネットワーク、SSP・DSPのセールスに携わり、2017年よりレコメンド広告事業社であるpopInへ。マネージャー、広告審査室長、事業責任者を歴任し、2022年に取締役に就任。2023年に独立し、Integrasolを設立。現在は、インターネット広告事業をメインに、植木事業も展開。湘南エリア、三浦半島を中心に庭木の伐採・抜根、剪定、草刈り、芝張り・防草シート設置など、庭周りのサポートも行っている。
一井智香子