IT企業元役員がなぜ「草むしり」を仕事に?ネット業界の知見を活かした新たな植木業
誰もが持っているだろう、自分の働き方の“当たり前”。 たとえばオフィスに週5日出勤すること、会議や打ち合わせに対面で出席すること、取引先と会食すること……。当たり前だった日ごろのルーティンは、コロナ禍によって根底から揺るがされた。 【全画像をみる】IT企業元役員がなぜ「草むしり」を仕事に?ネット業界の知見を活かした新たな植木業 インターネット広告業界に20年以上携わり、朝から晩まで仕事に邁進する生活が当たり前だった梶野剛さんも、コロナ禍の緊急事態宣言によって在宅生活を余儀なくされた。 仕事観や家族観、そして時間の価値を見つめ直すことになり、デジタル最先端のIT業界から独立。さらには、フィジカルワークの植木業界へ、未経験からチャレンジすることを決断した。
IT業界一筋で走り続けた会社員時代
大学卒業後に就職したのは、老舗広告代理店の協同広告(現・フジ・メディアHDのクオラス)。 時代を席巻していたテレビドラマの主人公が活躍する営業部やテレビ局担当に憧れて入社したものの、配属先は夜明けを迎えたばかりのインターネット広告部門だった。 「初めて新卒社員が配属された部署だったので、もう5月にはアカウントを持たされて営業に奔走していました。何もかも手探り状態でしたが、インターネット広告の黎明期から携われたことは幸運だったと思います」 その後のインターネット広告の技術革新は枚挙にいとまがない。2008年ごろから“アドテク”という言葉を聞くようになり、システム化がいっそう加速していく。 「この市場は今後さらにこの傾向が続く」と踏んだ梶野さんは、2011年に外資系プラットフォームのアドバタイジングドットコム・ジャパン株式会社(現Boundless)に転職。当時、国内最大規模のアドネットワークで、買い付け責任者を任された。 「30代前半までの10年で、業界が目まぐるしく進化しました。最初から身を置いていたからこそ急速な業界の変化に順応できたのだと思います。 ただ、変化が激しい業界だからこそ、一旦落ち着きたいという気持ちも少しずつ芽生え始めていました」 そんな矢先に出会ったのが、国内最大規模を誇るネイティブアドネットワークを手掛けていたpopInの創業者・程 涛氏だ。 「自身でベンチャー企業を立ち上げ、社長でありながらもプレイヤーとして活躍する程さんに一目惚れしてしまって。この人についていきたいと転職を決めました」 こうして17年にpopInに移り、デジタル広告のセールスマネージャーや品質管理室室長、営業統括マネージャーを歴任。2022年にpopIn代表を退任した程氏を継いで取締役に就任し、日本と韓国の事業責任者を約1年半勤めた。