来年春、iPhoneにマイナンバーカードが一体化すると何が起こるのか?
AppleのiPhoneには「Wallet」という機能がある。 これはiPhoneを使った非接触型決済には必要不可欠のもので、筆者自身もWalletに複数枚のクレジットカードを登録している。iPhoneを使えば、買い物の際にわざわざカードを取り出す必要はない(その店舗が非接触型決済に対応していればの話だが)。 そして、来年春にはマイナンバーカードをWalletに登録できるようになる見込みだ。マイナンバーカードとiPhoneが一体化する、と表現してもいいだろう。 この話題は、iPhoneユーザーの多い国として知られている日本人の生活を少なからず変革する可能性を秘めている。
広がる「ワ方式」
身分証明カードとしてのマイナンバーカードは、「家内制手工業レベルの技術では偽造が不可能」という特徴を有している。 もっとも、「券面だけ」の偽造マイナンバーカードは既にある。しかし、問題はカードに内蔵されたICチップである。1万円札のカラーコピーだけなら誰でもできるのと同じで、それを本物と遜色ないレベルの作りにするのは非常に困難……というよりまず不可能なのだ。 したがって、最近ではマイナンバーカードのICチップを使った本人確認方式(ワ方式)を導入する企業が増えている。 それは、たとえば銀行口座やクレジットカードの新規申込みをオンラインで行う場面でも用いられている。従来行われていたカード券面の写真を撮影する方式の本人確認(ホ方式)では、偽造を見破れない可能性があるのだ。ワ方式の本人確認は、そのあたりの堅牢性においてホ方式の遥か上を行く。 しかし、ワ方式は当然ながら「スマホの本体にマイナンバーカードをあてがう」という過程が存在する。
銀行口座もクレカもスマホがあればOKの時代
デジタル庁が作成したこのPDF資料には、「マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載について」という項目がある。 そこには、マイナンバーカードをスマホに搭載した場合にできることが書かれている。「銀行・証券口座開設」や「携帯電話申込」、「キャッシュレス決済申込」もその中に含まれているのだが、iPhoneのWalletにマイナンバーカードを組み込むことで、銀行口座開設時にカードを取り出す必要がなくなるかもしれない。 「かもしれない」というのは、国とAppleがどう動こうと、そしてどのような法改正がされようと、最終的には各銀行の対応如何の話になってしまうからだ。 Android機種だけでなくiPhoneにもマイナンバーカードを搭載できるようになる。しかもそれは、今年5月に岸田元総理とAppleのCEOティム・クック氏とのオンライン会談を機にはずみがついた話である。このペースの速さに銀行がついていけるか、という問題も出てしまうのだ。 実のところ、地方銀行や信用金庫も含めた金融機関の中には「最近ようやくホ方式の本人確認をプラットフォームに組み込んだ」という場合もある。金融機関は官公庁と同じく、4月を初めとした年度毎に事業計画を立て、実施する。首相が9月もしくは10月の臨時国会の所信表明演説で何を言ったとしても、金融機関はそれに合わせて急に計画を変更することはできないのだ。 が、ペースはどうあれ「マイナンバーカードを搭載したiPhoneで銀行口座を開設する(そのための本人確認を実施する)」という光景はもはや夢物語ではなく、実現まであと少しのところへ来ている。