渡辺えり古稀記念2作連続公演『鯨よ!私の手に乗れ』『りぼん』【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】
一生一度の「43人キャスト、2本連続」公演
中井 私はずっと紙のチラシが好きでこの連載も続けていますが、この先紙のチラシはどうなると思いますか? 立花 僕も印刷が大好きですし、紙のチラシって体験だと思います。持っている感じや匂いを身体として覚えている。だからデジタルでも伝わることは意識しつつ、紙はぜひ残したいし、とっておいてもらえるチラシを作れたらいいなと思っています! 渡辺 紙はなくなったら嫌ですね。だって歴史的にも紙がいちばん残っていますから。この前『NHKスペシャル』で、ユダヤ人の収容所跡地から丸めたメモがつい最近出てきたというのを見て。あれ、紙だから残ったわけでしょう。デジタルだったら残らない。中井さん、いいコーナーを作りましたね。 中井 私、いままでお話を伺ってきたたくさんの方々のチラシを一堂に会する展覧会をやりたくて。あと、演劇からチラシではなくて、チラシから演劇が生まれないかとも思っているところです。 渡辺 面白そう。 中井 今回、本チラシもさることながら仮チラシも面白かったですね。キャストの名前とともに数字が並んでいて、シンプルながら「なんだろう?」と考えさせられるもので。 渡辺 キャストのみなさんが私と付き合った年数を書いたものですね。あれは大和田美帆ちゃんと相談して決めたんです。そしたら室井滋さんの数字を間違えちゃってて。「もっと前から知ってるよ」と言われました(笑)。 中井 本チラシではメインビジュアルを囲むようにキャストの顔写真が並んでいますが、2本連続上演だから、並べるだけでもたいへんですね。手に取った時に、こんなに豪華な人たちが こんなにいっぱい出る芝居が2本も連続であるなんて嘘でしょ? と思ってしまいます。 渡辺 自分でもバカじゃないかと思いますよ。アングラ系の演出家や批評家がどんどん亡くなっているけど、アングラって命をかけてやるものだから。本当、これは一生に一度の公演ですよ。だって、キャスト43人ですよ? この前NODA・MAPを観ているときに数えたら27人。これより多いのか、大丈夫かな、と思って。もう最近は芝居を観に行くたびに人数数えてます。 中井 それを、しかも2本連続で。 渡辺 いま稽古をやっていますけど、2作品を1日おきにやるから、役者も忘れちゃう。前代未聞ですよ! だけどやっぱり、いつ死ぬかわからないから。やれるときにやらないと。 取材・文:釣木文恵 <公演情報> 渡辺えり古稀記念2作連続公演 『鯨よ!私の手に乗れ』『りぼん』 作・演出:渡辺えり 出演: 『鯨よ!私の手に乗れ』 木野花 / 三田和代 / 黒島結菜 北村岳子 / 広岡由里子 / 土屋良太 / 桑原裕子 / 深沢敦 小日向星一 / 黒河内りく / 串田十二夜 / 小日向春平 / 小出奈央 / 春可直子 / 松井夢 福間むつみ / 吉田裕貴 / 藤浦功一 / 岡野一平 / 手塚日南人 宇梶剛士 / ラサール石井 アイザワアイ / 後藤茂 / 佐藤俊彦 / 椎木美月 / 翠月瞳 / 宮下浩行 / 夢乃 青井想 / 金井ひとみ / 鈴木楓加 / 東宮綾音 / 南条采良 / 森嵜未弓 / 佐藤舞希子 / 川波幸恵 / 近藤達郎 渡辺えり 『りぼん』 室井滋 / シルビア・グラブ / 大和田美帆 / 広岡由里子 / 深沢敦 / 土屋良太 / 大西多摩恵 / 吉田裕貴 / 小日向星一 福間むつみ / 藤浦功一 / 小出奈央 / 松井夢 ラサール石井 / 宇梶剛士 春可直子 / 岡野一平 / 串田十二夜 / 黒河内りく / 小日向春平 / 手塚日南人 アイザワアイ / 佐藤俊彦 / 椎木美月 / 翠月瞳 / 宮下浩行 / 夢乃 青井想 / 金井ひとみ / 鈴木楓加 / 東宮綾音 / 南条采良 / 森嵜未弓 / 佐藤舞希子 川波幸恵 / 近藤達郎 渡辺えり 日程:2025年1月8日(水) ~1月19日(日) 会場:東京・本多劇場 <プロフィール> ■渡辺えり(わたなべ・えり) 山形県出身。舞台芸術学院、青俳演出部を経て、1978年から「劇団3○○」を20年間主宰(初期の劇団名は「劇団2○○」)。その後演劇ユニット「宇宙堂」を経て、現在は次世代の演劇空間の創造を目指す演劇制作集団「オフィス3○○」を母体に、劇作家、演出家、俳優として活動。1983年『ゲゲゲのげ 逢魔が時に揺れるブランコ』(1983)で第27回岸田國士戯曲賞を受賞。『瞼の女-まだ見ぬ海からの手紙-』(1987)で第22回紀伊国屋演劇賞受賞。映像作品への出演も多数。 ■立花和政(たちばな・かずまさ) 兵庫県生まれ。自身で演劇ユニットをしていた頃にデザインをはじめる。ブランディングファーム・総合広告会社などでリブランディングを中心にコミュニケーション戦略やプロモーションの企画・コンセプトメイク・ディレクションに従事しながら、宣伝美術のデザイン太陽と雲として活動。演劇・ダンスや美術などのプロジェクトにアートディレクションやデザインで多数参加。2024年からは、事業会社に在籍しつつ本名の立花和政名義で活動開始。そのほか印刷・文字・引力に目を光らせている。 ■中井美穂(なかい・みほ) 1965年、東京都出身(ロサンゼルス生まれ)。日大芸術学部卒業後、1987~1995年、フジテレビのアナウンサーとして活躍。1997年から2022年まで「世界陸上」(TBS)のメインキャスターを務めたほか、「鶴瓶のスジナシ」(TBS)、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MX)、「華麗なる宝塚歌劇の世界」(時代劇専門チャンネル)にレギュラー出演。舞台への造詣が深く、2013年より2023年度まで読売演劇大賞選考委員を務めた。