地主の相続対策、安易な「都市部の収益不動産の購入」が痛い目を見るワケ…価格変動にどう対処する?【元メガ・大手地銀の銀行員の助言】
相続をする地主にとって、非常に影響が大きい「不動産価格」。変動する価格を目前に、どのような相続対策を進めていけばいいのでしょうか? 本記事では、地主の相続における不動産の価格変動の注目ポイントを、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
不動産価格を決める基準…「地価公示価格」とは?
地主の相続において影響が大きい「不動産価格」。相続税評価によって価格を算出するが、その基礎となっているのは地価公示法による「地価公示価格」である。 当該価格の算出は不動産鑑定士が担っている。また、相続税路線価は当該公示価格の約80%の水準であり、固定資産税評価額は公示価格の約70%の水準となっている。不動産鑑定士の役割およびそれぞれの価格について整理すると図表2のとおりである。
地主の相続対策は、価格の変動を強く意識
まず、47都道府県の地価公示の最高価格地の平均価格の推移から検討する。図表3のとおり平成25年(2013年)を底にして上昇傾向が続いている。特にここ数年は、価格上昇が著しい。 次に、東京都の地価公示の推移について検討を行う。こちらも同様に平成25年から上昇傾向であり、特に区部における不動産価格の上昇が顕著である。多摩地区においても上昇傾向を示しているが、上昇率は緩やかであり区部との差が大きくなっている。 平成25年はアベノミクスが始まった初年度であり、株価の上昇に連動するように不動産価格も上昇しており、そのなかでも都心部の不動産価格が大きく上昇していることが窺える。 ここ数年は不動産市場において新型コロナウイルスによる影響を受けていたが、令和5年に「5類感染症」に移行してからは日常が戻り、不動産価格も大きく上昇している。 令和2年からの全国の公示価格の変動率を検討する。 三大都市圏(東京・大阪・名古屋)については当然のことながら上昇しているが、これを上回っているのが地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)である。地方四市の全用途における令和6年の上昇率は7.7%である。 ほかの地区がコロナ禍において公示価格が下落していた際にも上昇しており、また令和5年においては8.5%上昇するなど、ここ数年の上昇は全国においても特に顕著である。 したがって、東京圏に限らず主要都市においては公示価格が上昇していることから、相続対策にあたっては価格の変動を意識した納税資金の確保などが望ましい。