伊藤園、全世界に通用する緑茶飲料製品に期待 欧州に本格進出 既存エリアは深耕 グローバル化推進への大きな布石
伊藤園はこのほど、海外向けの飲料用原料を使用にした飲料製品(ドリンク)の海外現地生産体制を確立して新たにヨーロッパに本格進出するなど長期ビジョン「世界のティーカンパニー」の実現に向けグローバル化を一気に推し進める。 海外では現在、北米と中国を中心に世界40カ国でドリンクとリーフを販売。世界的な健康志向の高まりを追い風に販売量は拡大の一途を辿る一方、ドリンクの輸送コストのリスクが足枷になっている。 これにより2023年4月期の北米事業は利益を圧迫。北米では、アジア地域で生産された「お~いお茶」を輸入販売していることから、一昨年は海上輸送費の高騰に悩まされた。 今回確立された新体制は、この輸送コストのリスクを大幅に低減するもので、グローバル化推進への大きな布石と同社は位置付けている。 同時に、全世界で日本品質のドリンクを展開することが可能になる。 この新体制は、ヨーロッパ本格進出にあたり、残留農薬基準などEUの厳格な法規制や環境規制を突きつけられたことが誕生の契機になった。
取材に応じた中嶋和彦執行役員国際本部長は「世界一厳しいとされるEUの規制を乗り越えたことで、審査項目が各国で異なったとしても、中身においては全世界対応になり、どこにでも持っていけるようになった」と胸を張る。 ただし容器については、各国の言語や規制に準じて記載内容を変える必要がある。 ヨーロッパには満を持しての本格進出となる。同社はかねてから、人口や経済規模などの観点からヨーロッパ市場に着目していたものの、北米事業やアジアの基盤づくりと黒字化を最優先としていた。 その上、厳しい法規制も立ちはだかっていた。 伊藤園は4月1日、ヨーロッパの橋頭保としてドイツ・デュッセルドルフ市に子会社(ITO EN Europe GmbH)を設立する。
そのドイツで、7月からドリンクの包材に関する規制が強まる。キャップについては開栓後も胴体部と切り離せられない“テザードキャップ”の導入が必須となる。 冒頭の技術革新は、テザードキャップに対応していくための手段として編み出された。 「テザードキャップを国内で生産しようとすると割高になってしまい、アメリカなど他の諸外国で追随の動きがみられなかったことから、思い切って現地生産へと舵を切った。ドリンクの製造協力会社様を吟味させていただき、試行錯誤して新技術に辿り着いた」と振り返る。 各国で製造会社の協力が得られれば、この技術は水平展開が可能となり、伊藤園の海外事業は急加速していくことが予想される。