斎藤知事、再選後初で最後の証人尋問始まる 兵庫百条委で総括審議
兵庫県の斎藤元彦知事らのパワハラ疑惑などを内部告発した文書の真偽を調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)は25日午後、斎藤氏への証人尋問を開始した。 【画像】公益通報めぐる証言の「食い違い」が焦点 兵庫県知事らに最後の尋問 斎藤氏への尋問は8月30日、9月6日に続いて3回目。斎藤氏が県議会で不信任決議を可決されて失職し、11月の出直し選で再選してからは初めてとなる。百条委は今回を「総括審議」とし、尋問はこれで最後になる見通し。 斎藤氏は午後3時ごろ、黒っぽいスーツで会議室に入った。真実を述べると宣誓した後、委員からは、斎藤氏が告発文書を入手した3月当時の県幹部との協議についての尋問から始まった。 委員からは、過去の尋問における斎藤氏と県職員らの証言の食い違いについて尋ねられた。その一つが、3月27日のやりとり。 斎藤氏の側近だった小橋浩一前理事は、告発文書を第三者で調査することを斎藤氏に進言したことを証言し、「ちょっと渋い顔をされて『どうかな』と。受け入れられなかった」と述べた。 だが斎藤氏は12月25日の尋問で、第三者調査について「議論の中で出たことはあるかもしれないが、進言された認識はない」と証言した。 4月中旬に関する証言にも、ずれがある。 元県民局長は4月4日、告発文書と同趣旨の内容を県庁の公益通報窓口にも告発した。斎藤氏の側近だった井ノ本知明前総務部長も尋問で、「調査結果を待って(処分する)と一度結論が出ていた」としたうえで、「(コーヒーメーカーの受け取りなど)文書問題が報じられつつあった時でもあり、知事から『風向きを変えたい』と意見があった」「(処分を)早める理由を私は最初は量りかねたが、騒がしい状況を早く鎮めたいという思いもあったと推察し、意見を指示として受け止めた」と証言していた。 これについても、斎藤氏は12月25日の尋問で、「私の認識、記憶では、風向きを変えたいっていう旨の発言をしたっていうことは全くない」と否定した。 百条委は地方自治法100条に基づいて設置された。証言拒否や虚偽の陳述をした場合には罰則があり、強い調査権限を持つ。 告発者の元西播磨県民局長は3月、パワハラなど斎藤氏らに対する7項目の疑惑を文書に記し、匿名で一部の報道機関などに送った。斎藤氏は知人から文書を入手。同21日に幹部に調査を指示し、同25日には片山安孝前副知事らが元県民局長のもとを訪れ、公用パソコンを回収した。 元県民局長は4月、県の公益通報窓口に3月とほぼ同じ内容を告発した。だが、県は公益通報の調査結果が出る前に、内部調査で「(文書の)核心部分が事実ではない」と結論付け、5月に停職3カ月の懲戒処分を出している。 百条委では、告発者を特定したことや3月の告発を公益通報と扱わずに処分したことなどが問題視された。 過去の尋問で斎藤氏は、告発文書は「誹謗(ひぼう)中傷性の高い文書と認識している」と強調し、処分についても「今も適切だと思っている」との認識を示した。 告発文書で指摘されたパワハラについては、県幹部らを叱責(しっせき)したり、話している途中に付箋(ふせん)を投げたりしたことや、勤務時間外に側近らに繰り返しチャットで指示を出したことを認め、「いくつかの行為は不適切だった。反省したい」と発言していた。(添田樹紀)
朝日新聞社