「Z李」逮捕はトクリュウ犯罪の“本丸”に迫る突き上げ捜査の入り口「警視庁の本気度」元刑事が解説
2022年11月にオートバイ窃盗事件のトラブル関係にあった相手の都内の自宅に無断で侵入した住居侵入の疑いで、警視庁暴力団対策課は東京都文京区の会社役員田記正規容疑者(43)ら男5人を逮捕した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は21日、デイリースポーツの取材に対し、今回の逮捕は「匿名・流動型犯罪グループ」(通称・トクリュウ)の“本丸”に迫るための「入り口」と指摘し、異例の規模となる捜査本部を設置した背景に「警視庁の本気度がうかがえる」と解説した。 田記容疑者はフォロワー数が90万人を超えるX(旧ツイッター)のアカウント「Z李」を運営していた1人とみられる。同アカウントは公営ギャンブルの予想や犯罪に関与したとされる人物の情報などを投稿していた。 このほかの逮捕者は東京都渋谷区の職業不詳沢口孝侑容疑者(38)、横浜市の総合格闘家宿輪幸治容疑者(33)ら。宿輪容疑者は「ANIMAL☆KOJI」のリングネームで格闘技イベント「K-1」や「RIZIN」などに出場していた。 小川氏は「この『Z李』というグループは炊き出しや保護猫のボランティア活動など“表の顔”がある半面、SNS等で暴露系もやっていた。さらに、その裏にある“闇の顔”もあったのではないかと言われています」と説明した。 さらに、同氏は「被害届を受理したのが1年以上経った昨年12月で、逮捕が今年11月13日。同15日に送検された。一部メディアでは被害者が仕返しを怖がり、被害届を提出していなかった等の報道もあったが、捜査関係者の話では被害届の提出を渋っていた被害者に『警視庁が保護するから』と説得して被害届を提出させ、受理したと聞いています」と明かした。 今回の逮捕の注目点として、小川氏は「警視庁の組織犯罪対策部暴力団対策課が陣頭指揮を執っていること。20の警察署による共同捜査本部が立ち上がったこと」を挙げ、「警視庁管内の所轄署は100余りで、その約2割に当たり、23区外の市にも広範囲に渡っている。6~7署の共同捜査本部は過去に聞いたことはあるが、20署というのは異例で、殺人事件の特別捜査本部以上の“帳場”の大きさになる。それだけ、警視庁の『2年越しの本気度』が伝わります」と力説した。 大規模な捜査網が敷かれ、また、暴力団対策課の捜査対象となったのはなぜか。 小川氏は「2年前の住居侵入だけでそんな大がかりな体制になることはない。『本丸』が別にあるということ。『新宿のZ李』というと、特にXでは非常に有名なのですが、実際に何をやっているか、詳細は分かっておらず、その実態解明が必要だったのだろう。トクリュウによる闇バイトの犯罪に関わっている可能性があるとみて、暴力団対策課が指揮を執っている」と解説した。 今後の展開について、小川氏は「延長勾留の期限となる12月5日頃に再逮捕し、さらに20日後、御用納め直前の26日頃に起訴されることも考えられる。そこまで逆算して、11月13日に逮捕したとも考えられます。『本丸』に迫る突き上げ捜査が進んでいくのではないか」と推測した。