【鹿児島・沖縄の糖業―迫られる変革】 残業規制、いよいよ始動 「今期は様子見」JAおきなわ
鹿児島、沖縄両県の島々で営まれる製糖業に対し、働き方改革関連法に基づく時間外労働(残業)上限規制が今冬2024―25年期から本格的に適用される。両県の主要製糖工場は計24(分蜜糖=粗糖16、含蜜糖=黒糖8)。製糖期は24時間操業で、従来は沖縄を中心に18工場が2交代制。24年度から違法となった残業「月100時間以上」「複数月平均80時間超」は常態化していた。法基準を従来からクリアしていた工場も、地域の労働人口の減少や他産業との人材獲得競争といった難題を抱える。これらの課題とどう向き合っていくのか。この夏、島々の製糖工場の担当者らに尋ねた。 沖縄県の伊江島は、鹿児島―奄美―沖縄航路の定期船寄港地・本部港(国頭郡本部町)からフェリーで30分。総面積は与論島とほぼ同じ約23平方キロ(2300ヘクタール)。1島1村で、20年国調人口は鹿児島県の与論町より約1千人少ない4118人。主要産業は与論と同じ、農業と観光。 伊江港から車で5分ほどのところにある伊江村黒糖工場は、JAおきなわ伊江支店が指定管理者となって運営する。23―24年期操業は12月に始め、3月に終了した。受け入れた原料サトウキビは6016トン。 2交代制だった工場は21―22年期から、3交代や新シフトでの2交代を試行してきた。JA伊江支店加工部の友寄孝明部長(工場長)によると、どれもうまくいったとは言えない結果だった。 「最初は部分的に3交代を1カ所でやったが、大変だった。『給料が減るから辞める』という人も出てね。次の年は3班2交代という形。これはシフトが二転三転した。昼勤2日、夜勤2日、休み2日という流れを試したが、体のリズムに合わないという話になって、結局5日勤務、2日休みを繰り返すローテでやったが、うまくいかなかった。季節工はそのローテで休ませたが、職員は休ませきれなかった。突発事案や急な欠勤があれば、出てこざるを得ない。月残業80時間以上は何人もいたよ」 「一言で言えば、人が足りない。おおまかに言って、3人の部署の場合、2班なら6人だが、3班になると1・5倍の9人必要。派遣会社を活用すれば、人数的には集まるかもしれないが、各部署のリーダーは簡単には1・5倍にできない。職員には異動があり、辞める人もいるからね。筋のよさそうな季節工がいても、次の年来てくれるかは分からない」 23―24年期の工場は職員15人、季節工50人で動かした。季節工のうち30人は村外からで、うち外国人が6人。来期は職員、季節工でA・B・Cと3班組んで「4日昼勤→2日休み→4日夜勤」というローテーションでの操業を計画。間もなく季節工の募集を始める。 友寄工場長の悩みは尽きない。 「来期の計画ローテだと、1人当たりの月残業は約60時間。従来だと残業150時間以上という人もいて、それ(残業代)をめがけて来る人もいた。これまでと違う条件で来てくれるか、今のところなんとも言えない。残業の上限規制を守れないという段階になれば、工場を止めるしかないのか…。仲間の間では『守れなかった場合、誰が、どんな処分を受けるのか』ということも話題に上る」 ◇ 沖縄には、JAが指定管理者の製糖工場が6施設(黒糖5、粗糖1)ある。いずれも従来は単純2交代で、昼夜のシフト交代で18時間勤務という日もあった。残業規制適用を前に、各工場でさまざまな試行を重ねてきた。来期は、伊江方式の「3直2交代」を基本に動かす方針だが、不安はある。JAおきなわ農業振興本部さとうきび振興部の宮平浩史次長は、こう話す。 「3直2交代は24年度が実質的なスタート。人も集めて回していくが、規制の80時間を超えないような形を試していく形になるだろう。3直2交代は前期一部でやってできているが、全6工場でできるかどうかは分からない。24年度は正直様子見だと思っている」