「小さくても通用する」を体現 関東大学バスケで3ポイント2位になった、身長163cmのスコアラー「一番は気持ち」
大前提として、気持ちで負けていたら勝てない
「高校1、2年の時は1cmずつ伸びていた記憶があります。そもそも163で止まる予定はなかったですし、さすがに170くらいにはなるだろうと思っていました(笑)」 そう言って白い歯を見せる山本には、少年の頃から憧れや目標に掲げるプレーヤーがいなかったという。だが、Bリーグが誕生し、その舞台で躍動する河村や167cmの富樫勇樹(千葉ジェッツ)、172cmの齋藤拓実(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)といったガード陣を見て、内側からフツフツと湧き上がるものがあった。 「やっぱり自分もこれぐらいできなくちゃいけないんだ」 謙虚さを持ってコートに立つことを大切する山本だが、控えめなプレーを心掛けるという意味では決してない。163cmという身長でチームに認められ、試合に出るには、人間性や謙虚さと同等、あるいはそれ以上に重要なことがある。 「やっぱり一番は、気持ちっすね。小さいから勝てないとか、小さいからできないというのは自分の中では言い訳だと思っていますし、大前提として気持ちで負けていたら絶対に勝てない。それは自分でも分かっています」 思えば、恩師の原田コーチもかつてこんなことを話してくれた。「山本は自分が小さいということをずっと背負って戦ってきているので、弱気になったら戦えないというのが体に染み込んでいるんだと思います。だから負けん気があって精神的にも強いんです」 「身長が低いのでディフェンスで狙われることが多いですけど、それ以上にオフェンスで点を取ってやろうという強い気持ちがあります」と述べる神奈川大の背番号3は、これからも自分のスタイルを貫き、自らの存在価値を高めていく。「得点を取ることにフォーカスしていきたいです。コートに立ったら自分が一番うまいと思ってプレーしていますし、得点を取れなければ自分がいる意味がないです」 左手から放たれる数々の放物線は、チームだけでなく、我々にも勇気を与えてくれる。
小沼克年