「突然正座になって、泣きながら『サッカーがしたいです』と…」シングルマザーが痛感した“子どもの体験格差”の厳しい現実
一人親家庭で生じている「体験格差」の実態とは
皆さまは子どもの頃。どのような「体験」をしてきたでしょうか? 旅行や習い事、休日に友達と遊んだり、夏休みには海や山へいったり、映画や芸術を鑑賞をしたり…。そういったあらゆる子どもの「体験」に、家庭や地域によって差が生じてしまう「体験格差」がいま話題になっています。 【あわせて読みたい】年収300万円未満の家庭は「子どもの習い事や家族旅行」を諦めがち? 話題の「体験格差」の実態とは そこで今回は「一人親家庭」における体験格差のリアルに迫りたいと思います。 今井悠介さんの著書『体験格差』から“子どもは親の苦しみを想像する”というトピックスをピックアップ。 家庭の中に大人が一人しかいないことによって生じる制約や、子どもの「体験」に及ぼす影響とは? 昨年の夏、あるシングルマザーの方から、こんなお話を聞いた。 息子が突然正座になって、泣きながら「サッカーがしたいです」と言ったんです。 それは、まだ小学生の一人息子が、幼いなりに自分の家庭の状況を理解し、ようやく口にできた願いだった。たった一人で悩んだ末、正座をして、涙を流しながら。私が本書で考えたい「体験格差」というテーマが、この場面に凝縮しているように思える。 私たちが暮らす日本社会には、様々なスポーツや文化的な活動、休日の旅行や楽しいアクティビティなど、子どもの成長に大きな影響を与え得る多種多様な「体験」を、「したいと思えば自由にできる(させてもらえる)子どもたち」と、「したいと思ってもできない(させてもらえない)子どもたち」がいる。そこには明らかに大きな「格差」がある。 その格差は、直接的には「生まれ」に、特に親の経済的な状況に関係している。年齢を重ねるにつれ、大人に近づくにつれ、低所得家庭の子どもたちは、してみたいと思ったこと、やってみたいと思ったことを、そのまままっすぐには言えなくなっていく。 私たちは、数多くの子どもたちが直面してきたこうした「体験」の格差について、どれほど真剣に考えてきただろうか。「サッカーがしたいです」と声をしぼり出す子どもたちの姿を、どれくらい想像し、理解し、対策を考え、実行してきただろうか。