原油が採れる量の問題じゃない! 日本のガソリン価格高騰はほぼ「産油国の政治的思惑」によるものだった
ガソリン価格は確かに年々上昇している
ガソリンスタンドに表示される、レギュラー、ハイオク、ディーゼルのリッターあたりの価格。知らない間に、なんだかいきなり高くなっていたり、または価格が一時的に下がっていたりと、ガソリン価格は変動する。そもそも、10年前、20年前……と比べてみると、ガソリン価格は本当に高くなった印象がある。 【写真】普段のガソリンスタンドにレーシングカー集結! 全日本ラリーを走るクルマの燃費事情 資源エネルギー庁は原則、毎週月曜日の調査を水曜日に公表している。その調査結果一覧を遡ってみると、調査資料の最初にある、いまから34年前の1990年8月のレギュラーガソリン全国価格は121円だった。その後、1998年1月には100円を切って99円となり、1999年4~5月には91円まで下がっている。 それが、2010年代に入ると120円台から160円台の大きな幅で変動した。2020年代になってからは、170円台や180円台が珍しくなくなっている。 じつは、こうした近年の170円前後のガソリン価格は、政府による「燃料油価格激変緩和補助金」が導入された結果によるものだ。 2022年6月、仮に補助金がないと215円に達しており、これを173円に抑制している。直近の2024年10月末でも、抑制をしなかった場合のガソリン価格は191円という高値なのだ。
原油価格の上下動は産油国の政治的な思惑などの影響を受けやすい
こうしたなか、野党の一部からは、いわゆる「トリガー条項」の凍結によってガソリン等に係る税金の減額を提唱する声もある。 では、なぜガソリン価格はここまで大きく変動するのか? 資源エネルギー庁では「ガソリン価格は原油価格に連動して、価格が決定しています」という表現を使っている。 周知のとおり、ガソリンなど内燃機関で使用される燃料の多くは、原油から精製されている。原油は、日本では極少量の産出はあるものの、そのほとんどを海外からの輸入に頼っている状況だ。中東、北欧、東南アジアなどの産油国や産油地域から大型輸送船によって、原油は日本に運ばれてくる。 こうした原油には、さまざまな種類がある。 筆者は産油地域のひとつであるアメリカ・テキサス州内で原油に関する取材を定常的にしてきた。そのなかで、資料として世界各地の原油サンプルを見たが、色、質感、粘度などが大きく違うことに驚いたことがある。 また、地域によって掘削する場所や方法にも違いがあり、産出にかかるコストも違う。 そうした基本的な生産コストだけでは、原油価格がここまで大きく変動することはないはずだと、原油に関係する各種現場を見ながら改めて感じた。 結局、原油価格は、産油国や産油地域における政治的な思惑や、それに関連した投資・投機が大きく影響するのが実状だ。原油のほとんどを海外からの輸入に頼っている日本は、こうした世界事情に対して受け身の姿勢を取らざるを得ない。そのため、エネルギー安全保障の観点から、日本国内で作られるエネルギーとして、再生可能エネルギーやそこで生まれた電力を使うEVの普及等の議論が進んでいるところだ。
桃田健史