核・ミサイル開発続ける北朝鮮 中国が制裁に及び腰なのはなぜか?
「ソフト」でも「ハード」でも……
仮に中国が「しびれを切らして」ハードランディングに転換した場合、北朝鮮は日干しになるか、自暴自棄になる危険性が膨らむかのいずれかですが、「国家」より「体制」を優先させる現在の北朝鮮政府が、後者に向かう可能性は大きいといえます。 その一方で、中国がソフトランディングにこだわる場合でも、北朝鮮は中国に懐柔されるか、その引力圏から逃れるために、これまで以上に核・ミサイルによる「問題行動」をエスカレートさせるかしかありません。ロシアという「代わりのスポンサー」を得たことは、北朝鮮政府に「おとなしくする」という選択肢を取る必然性を低下させます。 つまり、いずれに転んでも、北朝鮮の行動がエスカレートする可能性は大きいといえるのです。 2003年に始まった六者会合に北朝鮮は、中国の働きかけもあって参加しました。しかし、米本土に届くICBMが開発され、さらにロシアが関与を深めるなか、北朝鮮問題のステージは「中国の方針で北朝鮮の行動が大きく左右される」段階を超えてしまったといえます。その意味で、現段階で他国より中国が北朝鮮に影響力をもっていることは確かとしても、その対応一つで状況が改善するとは考えにくいといえるでしょう。
----------------------------------- ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬社)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo! ニュース個人オーサー。個人ウェブサイト