核・ミサイル開発続ける北朝鮮 中国が制裁に及び腰なのはなぜか?
北朝鮮は7月28日深夜、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射しました。今年に入って、弾道ミサイルの発射は11回目になります。米トランプ大統領は翌29日「中国にとても失望した」と発言。米中首脳会談以来、トランプ大統領は中国に制裁強化を含む北朝鮮への働きかけを求めてきただけに、米本土を射程に収めるICBMの発射によって米国でも危機感が募っています。 【写真】緊迫する北朝鮮情勢(上)アメリカはどこまで「本気」なのか? トランプ大統領の発言の背景には、国連安保理で北朝鮮への経済制裁が決議されてからも、中国が北朝鮮との貿易を中止していなかったことがあります。中国の貿易は「経済制裁を骨抜きにする」と批判される一方、「北朝鮮に中国が大きな影響力をもつ」ことの根拠と捉えられてきました。 それでは、なぜ中国は北朝鮮への制裁に及び腰なのでしょうか。取り引きを続けることで北朝鮮に影響力をもつことは、中国にとってどんなメリットがあるのでしょうか。中国と北朝鮮の関係をまとめます。(国際政治学者・六辻彰二)
北朝鮮にとって9割占める中国との貿易
まず、中国と北朝鮮の経済取り引きの状況を確認します。表1は、北朝鮮の貿易額を示しています。北朝鮮に対する経済制裁が国連安保理で決議されたのは、弾道ミサイル発射と核実験が実施された2006年からです。それ以降、多少の増減を続けながらもその貿易額に大きな変化はありません。 ところが、そこにおける中国の割合は、2009年ごろから目立って上昇。これは北朝鮮の非核化をめぐる「六者会合」(日米韓朝中ロ)が行き詰まり、経済制裁が強化された時期にあたります。北朝鮮の主な輸出品は石炭で、中国からは石油・ガソリンなどが主に輸入されているとみられますが、2010年代半ばには輸出、輸入とも中国が全体の90パーセント前後を占めるに至っています。 さらに、取り引きされているものには、エネルギーなど民生品だけでなく、核・ミサイル開発に関連する物資・技術も含まれているとみられます。日本を含む西側先進国で監視の対象となっている北朝鮮のフロント企業の多くは香港を含む中国を拠点にしており、これらを通じて北朝鮮は核・ミサイル開発に必要な物資などを調達しています。 つまり、中国との経済交流は、北朝鮮に対する経済制裁の効果を弱め、金正恩体制が生き残ることを、結果的に可能にしてきたといえます。それは「北朝鮮に中国が大きな影響力を持つ」という見方につながるのです。