中島洋太朗、井上愛簾に負けられない――1学年下の後輩から刺激を受けた中川育が自身の価値を示す圧巻ハット【U-19日本代表】
ミャンマーに6発快勝でU-20アジア杯出場に王手
[U-20アジア杯予選第2節]日本 6-0 ミャンマー/9月27日/Dolen Omurzakov Stadium 【画像】トップリーグに続々参戦!2024年夏に海外で新天地を求めたサムライたち サンフレッチェ広島ユースでは10番を背負い、昨季のU-18高円宮杯プレミアリーグWESTでは得点ランク4位タイとなる12得点を奪った。しかし――。MF中川育はトップチーム昇格を果たせず、流通経済大へ進学した。 「見返したい」。さらなる成長を目ざしてから約半年、機動力と得点感覚で勝負するアタッカーがアジアの舞台で躍動した。 9月27日、U-20アジアカップ予選の第2戦がキルギスの首都ビシュケクで行なわれ、U-19日本代表はミャンマー代表を6−0で撃破。来年2月に開催されるU-20アジア杯(U-20ワールドカップの最終予選)への出場に王手をかけた。 各組の1位と2位の上位5チームが予選突破となるレギュレーションのなか、日本は序盤から6バックのミャンマーを圧倒。サイド攻撃を軸に押し込み、効果的にゴールを重ね続けた。多くの選手が良さを示したなかで、とりわけ素晴らしいパフォーマンスだったのが中川だ。 左SHで先発起用されると、左SBの池田春汰(筑波大)とのタッグで積極的に仕掛けた。しかし、決定的な仕事をするまでには至らず、0−0で迎えた20分過ぎに船越優蔵監督はポジションチェンジを決断する。右サイドの西原源樹(清水)と入れ替え、中川は右に配置転換された。 「中川育も右をやった経験がある。本人に聞いても『左でもいいけど、右もできます』と話していた。それで流れもまた変わったので良かったですね」と指揮官が話したように、この策が見事にハマる。1−0で迎えた32分、大関友翔(福島)が左サイドからアーリークロスを入れると、右から最終ラインの背後に走り込んだ中川が頭でネットを揺らした。 後半に入ってもスペースを上手く使い、フリーランや得意のドリブルでチャンスメイク。相手の脅威になり続けると、83分に横山夢樹(今治)の左クロスに合わせて2点目をゲット。直後の84分には廣井蘭人(筑波大)のスルーパスに抜け出し、ハットトリックとなる一撃を決めた。 ポジションを変えてから圧巻の3ゴール。チームの勝利に貢献した中川だが、自身の出来に満足していないと話す。 「3点取れたけど、僕自身まだまだなところもあった。もう1、2点取れたので。ハットトリックを達成できたのは、今の相手だからできたところでもある。世界の強豪国と対戦すれば、難しくなると思うので対応をしていきたい」 気を引き締めた中川だが、次のステージを見据えているのには訳がある。船越監督から世界基準を求められているのも理由のひとつだが、後輩たちの活躍が刺激になっているからだ。 広島ユース時代のチームメイトで1歳年下の中島洋太朗と井上愛簾はすでにトップチームでプレーしており、昨秋にはU-17ワールドカップにも出場した経験を持つ。先輩としては後輩に負けるわけにはいかず、彼らへの対抗心がより高みを目ざす原動力のひとつになっている。 「一個下のふたりが(U-17)ワールドカップで活躍して、一個上の世代の代表に入ってきているので、負けていられない。ここで結果を出して、自分もワールドカップに出たい」 アジア杯予選で得た出番を確実に活かし、3得点を挙げた成果はアピールになる。悔しさをバネに這い上がってきたアタッカーは、キルギスとの最終戦でも自らのゴールでチームを勝利に導く。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)