バルニエ内閣崩壊のフランス、次の政権も不安定化するのは確実、仏国債暴落から欧州債務危機に発展の危険性も
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 第5共和制になって最短の3カ月で内閣崩壊 [ロンドン発]仏国民議会(下院、577議席)は12月4日、社会保障財源法案を無投票で通したミシェル・バルニエ首相に対する内閣不信任決議案を左派連合と極右「国民連合」の賛成331票で可決した。バルニエ内閣は第5共和制(1958年~)になって最短の3カ月で崩壊した。 【写真】2027年4月に第1回投票が予定される次期大統領選で首位を独走する、マリーヌ・ルペン氏 極右が勢力を拡大するドイツでも3党連立政権が公共サービスや気候変動対策の財源を巡って崩壊、来年2月に総選挙が行われる。オーストリア国民議会やルーマニア大統領選でも極右が台頭しており、欧州政治の混迷は一段と深まっている。 フランスで内閣不信任決議案が可決されたのは1962年、ジョルジュ・ポンピドゥー首相以来62年ぶり。この時はシャルル・ドゴール大統領が国民議会を解散して勝利し、ポンピドゥー氏が首相に再任された。エマニュエル・マクロン大統領は直ちに後継者を選ばなければならない。 フランス政治がダッチロールに陥ったのは6月の欧州議会選で、脱悪魔化を進めたマリーヌ・ルペン氏の国民連合とエリック・ゼムール党首の「再征服」の極右勢力が過去最高の計約37%を獲得、マクロン氏が議会解散・総選挙に踏み切ったのがきっかけだ。が、賭けは裏目に出た。
■ 英国のEU離脱交渉で辣腕ぶりを発揮したバルニエ氏 国民議会選は左派連合180議席、マクロン氏の中道連合159議席、国民連合142議席の三すくみの結果に終わった。9月、マクロン氏は英国の欧州連合(EU)離脱交渉で辣腕ぶりを発揮した中道右派・共和党のバルニエ氏を首相に任命。中道連合と共和党中心の内閣を発足させた。 三すくみの国民議会は選挙から1年を経なければ解散できない。行き詰まり打開のため大統領退陣を求める声も強まっているが、マクロン氏は「そのようなシナリオは政治的虚構に過ぎない」と一蹴した。しかし、マクロン氏に選択肢は残されていない。 フランスの次期大統領選は2027年4月に第1回投票が予定されるが、ルペン氏が首位を独走する。決選投票でも勝利する可能性が高まっている。ルペン氏はXに「苦しむ人たち、希望を抱く人たちに言いたいのは大きな転換が現実になる時はそう遠くないということだ」と投稿した。 「その日はすぐに、おそらくとてもすぐにやってくる。フランスが待ち望んでいる真の希望の衝撃となるだろう」と力を込める。しかし、そのルペン氏は04~16年の間、欧州議会の議員活動を支える資金を国民連合の活動に流用した罪に問われている。