「奇跡の少年と呼ばれ…」「生き残ったことを素直に喜べず」福知山線脱線事故の負傷者と東日本大震災の被災者 2人の生存者が「命」語り継ぐ
■講演会へ 二人は互いの経験を共有し命について考えを深める
ことし9月、小椋さんの自宅に只野さんの姿があった。 二人は講演会の準備を進める中で、互いの経験を共有し、命について考えを深めた。 小椋聡さん:ここ(講演会)の場に来て下さる方はおそらく何かの経験をしていると思う。(話を聞いて)もう一回頑張ってみようかなと思える場所がこの会の目的ではないか。 只野哲也さん:『伝承』ではなくて『創出』新たな今の気持ちを作り出す場になるのかな。
■「一生震災とも大川小学校とも自分自身とも向き合う」
講演会には、東日本大震災の被災者や鉄道会社の社員など、100人以上が参加し、小椋さんと只野さんは、それぞれの経験を通して得た命の重みについて語った。 只野哲也さん:東日本大震災っていうのは、僕が地元から外に出る、旅に出るための原動力にもなったと今は受け止めることができるようになったかな。 ひたすらに向き合うしかない。乗り越えるというよりは、一生僕は震災とも大川小学校とも自分自身とも向き合うことになると思う。
■「今まで気づかなかったものに気づいたことが脱線事故の経験」
小椋聡さん:脱線事故の被害者というと、非常に大変な思いをされて、今でも苦悩の中にいると思われている方が多いかもしれませんけど、決してそれだけではありません。 この事故を通して、私は妻を失いそうになった経験を通して、妻と一緒にいられること、隣ですやすや眠っている彼女の姿を見るたびに、幸せな人生を送れているなと思えるようになりました。 今まで気づかなかったものに気づかせていただいたのが、私はこの脱線事故の経験だったと思っています。 二人の話を通して、命の大切さを改めて考える機会となったという講演会の参加者。 鉄道会社の社員からは、安全に関する業務の重要性を再認識したという声も聞かれた。 当事者たちは、事故や震災とともに今を生きている。
■「どうしたら生命を大事に生きられるか知りたかった」と参加した人も
参加した東京メトロの社員は… 東京メトロの社員:(東京メトロも)事故の経験をしているし、私も安全をつかさどる業務をしていますので、社員に対して(事故を)どのように伝えていくか。 こういう方と接点を持ちながら、何か模索しながら構築していきたい。 別の参加者は、筆談で感想を述べた。 参加者:私もがんの手術を3回して声を失ったので どうしたら、自分も苦しみをのりこえ、生命を大事に生きられるか知りたかった 事故のおかげで幸せに生きられるようになったということが衝撃的でした。
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