アニモカ会長に聞く:ビットコインと株、Web3に集まる人の特徴、日本人の金融リテラシーと投資マインド
香港を拠点にブロックチェーンを基盤とするゲームやメタバースを開発し、同技術を活用するスタートアップへの投資を続けるアニモカブランズ(Animoca Brands)。三井物産や三菱UFJフィナンシャルグループをパートナー企業に迎え入れ、国内外の業界関係者がアニモカの動きを注視している。 ビットコイン現物ETF(上場投資信託)が初めて米国の証券取引所に上場し、ビットコイン・ブームの再来で始まった2024年、多額の資金がビットコイン市場に流れ込み、ビットコイン価格は史上最高値を記録した。世界の暗号資産(仮想通貨)市場は再び大きく変わろうとしている。 一方、伝統的資産の株式市場でも米国経済の強さやAIの需要拡大を背景に、「史上最高値」の文字が躍る。米国のダウ平均株価は史上最高値を更新し続け、ハイテク関連銘柄の多いナスダックの指数も「オールタイム・ハイ(All-Time High)」をつけた。日経平均株価も追随した。 年明けからあらゆる市場が目まぐるしく動くなか、アニモカを共同創業し、現在会長を務めるヤット・シウ(Yat Siu)氏が日本を訪れた。世界のマネーはどこに向かっていくのか。暗号資産、NFT(非代替性トークン)、メタバース、GameFi……ブロックチェーン業界では今年、どんなことが起こるのだろうか。シウ氏に聞いた。
復活したNFT、ゲームトークンにも熱視線
──ビットコイン現物ETFの初上場で始まった2024年、世界のブロックチェーン業界にとっては良いスタートを切ったのでは? シウ氏:2023年の終わり、ビットコインは価格上昇の勢いを強めた。同時に、NFTの販売量も増加し、NFT市場全体の価格が高騰した。1年前の状況を考えると、NFTも復活したと言えるだろう。 現に、NFTの新たなカテゴリーに属するビットコイン・オーディナルの取引が活発化し、価格も上昇を続けている。 ビットコインはWeb3にとって、「リザーブ通貨(準備通貨)」のようなもの。過去数カ月で起きたビットコインの価格高騰と同時に、暗号資産市場全体が活気づいた。加えて、多くの「GameFi(ゲーミファイ)」トークンの価格が上昇していることは、注目すべきだ。 日本では独自のゲーミファイがそれほど開発されておらず、ゲーミファイトークンの相場動向が伝わりにくい環境にあるかもしれない。今後、ゲーミファイを開発しようとする動きはさらに活発になっていくだろう。 2022年から2023年にかけて、世界の暗号資産業界を揺るがす大規模な問題が発生した。テラ(Terra)、スリーアローズ(Three Arrows)、FTX、そしてバイナンス(Binance)の問題が次々と起こった。2024年、過去2年間で発生したような問題が再び存在することは、現時点では考えにくい。 ビットコイン・オーディナルとは:ビットコインブロックチェーン上のピクセル化されたデジタル画像のNFTで、英語では「Bitcoin Ordinals」と呼ばれている。 GameFi(ゲーミファイ)とは:ブロックチェーンゲームと金融(ファイナンス)を融合させたもので、ゲーム内のアイテムやキャラクターはNFT化され、ゲームで獲得する報酬は暗号資産で受け取ることができる。 2022年~2023年に起きた大規模な問題とは:韓国のテラフォームラボの暗号資産「ルナ(Luna)」の価値がゼロとなり、破綻した事件。ルナは、ステーブルコイン「テラUSD」の裏付け資産となっていた。 当時、世界最大規模の暗号資産取引所を運営していたFTXは、日本円に換算して1兆円を超える負債を抱えて破綻した。スリーアローズキャピタル(3AC)は、シンガポールを拠点に暗号資産のヘッジファンドを運用していたが、同じく2022年に破綻した。 米国では、バイナンス(ホールディングス)と最高経営責任者のチャンポン・ジャオ(CZ)は2023年11月、マネーロンダリング(資金洗浄)防止法違反に加えて、イスラム組織ハマスや他のテロリスト集団との取引を容認。同社は刑事責任を認め、43億ドルの罰金支払いに同意した。