米軍にどこまで協力? 行動範囲は? 「安保法制」4つのポイント
「駆けつけ警護」と武器使用は?
第3に、平和維持活動(PKO)は紛争が終了した後に国連によって始められるものです。しかし、紛争が終了しているか否か判断が困難な場合があり、実際に終了していなければPKO部隊が紛争に巻き込まれる恐れがあります。国連はその判断のために、「紛争当事者間に停戦の合意があるか否か」ということと、「紛争当事者がPKOを受け入れることに合意しているか否か」を確かめることにしています。 日本は、この2つの基準を国連よりさらに厳しく運用してきました。日本のPKO参加のため1992年に制定されたPKO法とその運用方針である「PKO参加5原則」はそのような厳格な考えに立って武器の使用を厳しく制限しているため、自衛隊と同じ場所でPKOに参加している他国の部隊や民間人を危険から守ること、いわゆる「駆けつけ警護」はできませんでした。 しかしこれではPKOとしての任務を十分に遂行することができません。新方針は、「駆けつけ警護」や邦人救出の際には必要な程度武器を使用できるようにすべきであるとしました。この考えに従い、PKO法と「PKO参加5原則」の他、自衛隊の権限と行動を定めている自衛隊法95条などが改正されることとなるでしょう。
「グレーゾーン事態」への対応は?
第4に、いわゆるグレーゾーンの事態について、新方針は、離島の周辺地域等において外部から不法な侵入・侵害が発生し、警察力で直ちに対応できない場合には自衛隊が行動できるように必要な法整備を行なうとしています。 この他、他国の領海内を潜水艦が通過する場合、海上を航行しなければならないという国際法の規則に違反して、外国潜水艦が潜没航行する場合にも自衛隊が対処できるよう法律を改正すべきだと言われています。この問題に関する政府の具体的な方針はまだ示されていませんが、やはり重要な問題として注目していく必要があります。 なお、中期的な観点から定められる日米の防衛協力についてのガイドラインは以上の諸点と密接な関係があるので、日本での法案の準備状況を見ながら策定されるものと思われます。 (美根慶樹/平和外交研究所)