阪堺電気軌道車庫へ潜入 日本一古い営業車両から新型も
日本屈指の長寿車両や路面電車ならではの設備
車庫ぶらTHEPAGE大阪 阪堺電気軌道車庫へ潜入 日本一古い営業車両から新型も 撮影・編集:柳曽文隆
関西の鉄道車庫を巡る「関西車庫ぶら」今回は、大阪唯一の路面電車・阪堺電車の車庫を訪れた。こじんまりとした車庫の中には、日本屈指の長寿車両や、路面電車車庫ならではの設備など、興味深いものが満載。その様子をお楽しみください。
「ちん電」浸透で「阪堺電車」と言っても通用しない?
日本一の高さのビル・あべのハルカスのお膝元から、1両編成のかわいい電車が南へ向かって出発する。「ちん電」の愛称で親しまれている、阪堺電気軌道だ。文字通り大阪と堺を結び、全長18.5キロの路線で活躍する車両は全部で35両。そのメンテナンスを一手に引き受けているのが、ちょうど大阪市と堺市の境目にある、我孫子道車庫である。 「地元の足として多くの方にご利用いただいていますが、実は当社の存在を知らない方も多いんです。住吉大社さんへ初詣に来られた方から『大阪にもチンチン電車があるんやね』と言われることも多いです」と、案内してくれた技術課長の松下寛さんは笑う。 ちなみに、地元の方には「ちん電」という愛称が浸透しているため、「阪堺電車」と言っても通用しない場合もあるのだとか。
塗装は職人さんが筆を駆使
さっそく車庫へ案内してもらった。まず目に入ったのが、大きな木造の屋根とその下に並ぶ車両たち。建物の基礎はレンガ積みだった。 大正12年に建てられたもので、第二次世界対戦の戦火をくぐり抜けたもの。本線に一番近い場所のドアから中に入ると、ツンとしたシンナーの臭いがした。 「ここは塗装場です。広告電車などの塗装も、すべてここで行ないます」 阪堺電車の名物ともいえる広告電車。現在は28両が、それぞれ特徴的なカラーリングとなっているが、驚きなのはこの広告、実はすべて手塗りなのである。 「他の鉄道会社では、ほとんどが印刷されたラッピングシートを貼付けていますが、当社では職人さんが筆を駆使して塗装しています。『この方が味があって良い』と、広告主さんからも好評です」 古い塗装をはがしてからベースとなる塗装を行ない、その後に広告のデザインを描く。1両の広告電車を仕上げるのには約2週間かかるそうで、大小の筆を使い分けながら丁寧に仕上げていくのだそうだ。