阪堺電気軌道車庫へ潜入 日本一古い営業車両から新型も
デト11形という電動貨車
車庫の片隅には、何やら荷物を積んだ車両も停まっていた。デト11形という電動貨車で、その名の通り貨物を輸送するための車両。もともとは枕木や砂利など、保線資材などを運ぶのに使われていたという。 最近でも、深夜の保線作業などで走ることがあるそうで、見かけられたら相当ラッキー。そしてこの車両、年一回とても重要な”任務”についている。 「毎年6月にこの我孫子道車庫で『路面電車まつり』を開催しています。車両展示やグッズ販売のほか、鉄道タレントさんのトークショーなどを企画するのですが、その際このデト11号車の荷台部分をステージとして使っています」 今年6月の路面電車まつりでは、女性鉄道タレントの斉藤雪乃さんがこの上でトークを繰り広げたそう。昔は花電車などでも活躍した同車の、年一度の”晴れ舞台”というわけだ。
末永く活躍できるように頑張りたい
米寿を迎えた古豪から最新鋭の超低床車両まで、さまざまな車両が集う我孫子道車庫と、その面倒を見る松下さんたち検修スタッフ。 「やはり、新型車両は故障しにくいし、何かあってもメンテナンスが非常に楽です。対して旧型車両は、保守部品の確保にも苦労することがある。でも、これまで大切にメンテナンスされ、地元の人にも愛されている車両。いたわりながら末永く活躍できるように頑張りたいです。もうすぐ100歳も見えてきましたしね(笑)」 2011年には恵美須町~浜寺駅前の阪堺線が100周年を迎えた「ちん電」。その役目は変わることなく、より便利さを増して今日も元気に走っている。 (文/伊原薫/鉄道ライター) ■伊原薫(いはら・かおる)大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。 ※360度映像をスマートフォンで見る場合は「Youtubeアプリ」でご覧ください