阪堺電気軌道車庫へ潜入 日本一古い営業車両から新型も
路面電車ならではの設備?
塗装場の奥には、いかにも工場といった空間が広がっていた。ここは自動車の車検にあたる、大掛かりな般検査を行なう場所。4年に1回、ここで主要機器を全て分解し、徹底的に検査・修繕をする。工場内には路面電車ならではの小さな車輪が見られた。
「路面電車ならではの設備をお見せします」と、建物の外へと案内された。そこには、橋桁のような機械があり、両側に線路が並ぶ。 「これはトラバーサーという機械です。ここに車両を載せて、水平移動することで、狭い敷地を有効に使っています」なるほど、確かに1両単位で動き、車両自体も短い路面電車ならではの工夫だ。トラバーサーの奥には、検査中などのため自力で動けない車両を牽引する「入換機関車」と呼ばれる車両も。廃車となった車両を改造したもので、”顔”だけが残ったようなユーモラスな形をしていた。
堺トラム 阪堺初の超低床車両
次に案内されたのは、3日に1度の周期で行なわれる「列車検査」のための建物。ちょうど、最新車両「堺トラム」が体を休めていた。 「堺トラムは、当社初の超低床車両です。これまでの車両と違って床面が低く段差も少ないため、車いすやベビーカーがそのまま乗り込めます。現在は3編成が活躍しています」LRVと称される超低床車両は、日本全国でどんどん増えていて、その利用しやすさから乗客にとても喜ばれている。
営業車両としては日本一古い車両
その隣は、3か月ごとの「月検査」を行なうゾーン。ここには緑色の古めかしい車両が停まっていた。実はこの車両、日本一なのだという。 「モ161号車は、昭和3年製で今年88歳。動態保存などではなく、一般営業されている車両としては日本一古い車両です」車内に入ると、床や窓枠など各部は木製で、ニスの光沢が美しい。手すりや網棚を支える金具は真鍮が使われていた。一方で、現在も一般営業に使っているため、運転席の横にはICカードに対応した最新式の運賃箱が設置されている。 モ161形は現在4両が残っており、そのうちトップナンバーである161号車は、1965年ごろの姿へと復元。「古い車両などから部品などをかき集めて、できる限り当時の姿に戻しました。車体に取り付けられた当時の南海電鉄のエンブレムなども、ぜひ見てください」もっとも、モ161形にはクーラーがついていないため、夏場は車庫で休んでいることが多いという。一方で他の車両にくらべて車体が大きく、多くの乗客を乗せられるため、お正月の初詣輸送には大活躍するのだとか。 「その他には、貸切電車としての”ご指名”も多いです」阪堺電車では、なんと年間250~300回もの貸切電車が走っている。その多くは飲み会や子供会だそうで、気軽に乗れて”非日常の体験”が味わえるのが人気の秘訣。最近は、結婚式の2次会やライブハウス代わりの利用もあるという。