優生思想の克服へ「かけがえのない命は存在するだけでいい」 大分市でシンポジウム、パネリストが体験や思い語る
障害者差別や命の選別について考えるシンポジウムが21日、大分市府内町のコンパルホールであった。「社会の役に立たない人間は排除してよい」といった考えにつながる優生思想の克服に向け、3人のパネリストが自身の体験や思いを語った。 約40人が来場。▽自閉症の娘がいる元大学教員の平野亙さん(68)=大分市▽車椅子生活を送る詩人でエッセイストの豆塚エリさん(31)=別府市▽旧優生保護法下の強制不妊手術で被害を受けた障害者の救済に取り組む弁護士の徳田靖之さん(80)=同市=の3人が意見を交わした。 平野さんは「能力の高い人で社会をつくった方が効率的と捉える感情があるかもしれない。だが人類が生き延びたのは、弱い人も生きられる社会をつくったからではないか」と問いかけた。 豆塚さんは高校時代に自殺を図り、障害を負った。「たくさん勉強して親や先生の期待に応えなければと不安だった。行き詰まったとき、居場所はないと思った」と明かし、存在価値を求められるつらさを語った。 徳田さんは「障害者にも生きる価値がある」という言い方の危険性を指摘。「その人の生きる意味や価値をしつこく問い続けるのが優生思想。かけがえのない命は存在するだけでいい」と訴えた。 主催は平野さんや豆塚さんが共同代表を務める市民団体「優生保護法裁判を支援する大分の会」。大分地裁で9月に終結した同法を巡る訴訟の報告会を兼ねて開いた。