『Meta Quest 3S』は『2』から優秀な進化を遂げた初心者オススメモデル! HMDマニアによる比較レビューをお届け
10月15日に発売された、Meta社の新型VR/MRヘッドセット『Meta Quest 3S』。既存機種から性能を引き上げた“新型”ではなく、すでに発売済みの『Meta Quest 3』の廉価版として位置づけられた一台だ。 【画像】Meta Quest 2/3と最新モデル『3S』の比較 VRだけでなくMRも体験できるヘッドセットとして昨年発表された『Meta Quest 3』は、基礎性能の高さと、やっと現実的な価格で世に出たコンシューマ向けのMRヘッドセットとしてたしかなポジションを得ている。とはいえ、販売価格は最大で10万円近くにも上るハイエンド機種でもあり、「これからVRを始める人」が手を出すには、いささか勇気のいるデバイスであった。 そんななかで発表された『Meta Quest 3S』は、画質などは先代の『Meta Quest 2』と同等だが、SoCなどは『Meta Quest 3』と同等で、MR機能も搭載、なにより128GBモデルが48,400円(税込)、256GBモデルが64,900円(税込)と、比較的安価なラインに収まっているのが大きな特徴だ。 今回は、『Meta Quest 3S』が終売予定の『Meta Quest 2』に代わる、「VRのエントリーモデル」になり得るかどうかを軸に、本機をレビューしていく。 ■開封:化粧箱は展開して片付けやすくなった まずは開封から。『Meta Quest 3S』も『Meta Quest 3』と同様に、化粧箱は比較的小さめ。デジカメなどの化粧箱を少し大きくしたようなサイズ感だ。 大きな特徴としては、観音開きの箱を開くと、一気に展開するようになっているところ。製品の取り出しやすさは大差ないが、化粧箱の収納・処分がかなりしやすい。製品の空き箱が部屋を圧迫しやすい日本の住宅事情にマッチしている。 同梱物はヘッドセット本体とコントローラー、ケーブルやメガネスペーサーなどのアクセサリー。箱を開けると、それらがかなりシンプルにまとまっている。正方形の台座にギュッと集まるコンパクトさは、『Meta Quest 3』の梱包にも通ずる。 ■外観チェック:全体的に『Meta Quest 2』に近い姿 『Meta Quest 3S』本体を見ていこう。正面のディスプレイ部は『Meta Quest 3S』と比べるとやや大きめで、全体的なフォルムは『Meta Quest 3』よりも『Meta Quest 2』の方が近い。 筆者私物の『Meta Quest 2』(Eliteストラップ装備)と並べてみると、『Meta Quest 2』よりも若干正面が薄めに仕上がっている。ただし、フェイスクッションの厚み分で、トータルの厚みは同じくらいだろうか。 おなじく私物の『Meta Quest 3』とも比較してみる。筆者はサードパーティ製ストラップを使用しているため、サイズ感がややわかりにくいが『Meta Quest 3』よりは正面部が厚めなのがわかる。 底部から見比べてみても、やはり全体的なフォルムは『Meta Quest 2』に近い。装着感はというと、デフォルトの布ストラップでの重心バランスではフロントヘビーだが、これは全ての「Meta Quest」シリーズに該当するところだ。 なお、右手の位置、音量操作バーの直下に設置されているのは、VRモードとMRモードを切り替える専用ボタンだ。『Meta Quest 3』同様に、側面のダブルタップでもモード切り替えは可能だが、明確な操作ボタンがあるのは直感的でわかりやすい。 電源ボタンにも、わかりやすい電源マークが刻印されている。『Meta Quest 3』には刻印が一切なかったため、これも直感的なわかりやすさに寄与している。 接眼部も同様に『Meta Quest 2』のそれと近しい。また、IPD(瞳孔間距離)の調節範囲も『Meta Quest 2』と同様に三段階のみであり、無段階調整が効いた『Meta Quest 3』とは異なる点には留意すべきだろう。 コントローラーは『Meta Quest 3』のものとおそらく同一。『Meta Quest 2』時代のリングパーツが取り払われた、スリムなフォルムである。使い勝手そのものは、『Meta Quest 3』のものと差異はない。 ■動作体験:MRを軸に快適性が向上 次に初期セットアップも体験してみる。まず、かぶってみて一発でわかるのが、MRモードが実用圏内であることだ。さすがに『Meta Quest 3』にこそ及ばないが、スマートフォン上の文字を視認できる程度には、フルカラーで一定の鮮明さを確保している。ここは『Meta Quest 2』から大きく進化したポイントだ。 そして、セットアップも非常にスムーズ。MRモードで周囲が見える状態で基礎情報を入力した後は、スマートフォンの管理アプリ「Meta Horizon」経由でペアリングし、ソフトウェアアップデートなどを走らせるだけ。スマートフォン上の確認もヘッドセットをかぶりながら進められる。こうしたセットアップの手軽さは、『Meta Quest 3』とも共通する。 セットアップ完了後、軽くVRアプリなどを体験してみた。わかったこととしては、顔面へかかる重さや、フェイスクッションのフィット感など、装着感は『Meta Quest 2』に近い。ただし、デフォルトの布ストラップは後頭部が三角形状のパーツで構成されているため、頭部への保持力はかなり強い。じつはこれ、初代『Meta Quest』に採用され、『Meta Quest 3』で復活した構造なのだが、おかげで純正パーツでも装着時の安定感がそこそこある。 そして、基幹メニューはMRモードが基本となる。ゲームをストアで探したり、Webブラウザを見る時はMRモードで周囲を見ながら実施でき、いざVRゲームをするときはVRモードへ切り替え、ゲームの世界へ没入することができる。ヘッドセットをかぶっていても周囲が見える点は、不慣れな初心者ほど恩恵が大きいだろう。 アプリ起動中も、動作に不安定さは感じない。さすがに画質は『Meta Quest 3』に劣るものの、大多数のゲームやアプリを体験する上では過不足ないレベルだ。トラッキング性能も同様だが、Metaの担当者によれば、LEDフラッドライトが二基になったことで、『Meta Quest 3』より暗所に強い特性も有するとのことだ。 ■総括:『Meta Quest 2』の後継者たり得る一台 総じて、デバイスとしては「Quest 2とQuest 3を足して割ったようなもの」だと感じた。基礎構造と画質は『Meta Quest 2』を踏襲しつつ、『Meta Quest 3』のMRモードや布ストラップのグリップ感などを輸入。2021年生まれの『Meta Quest 2』を、2024年仕様にアップデートしたような、絶妙な調整が施されている。 一方で、『Meta Quest 3』の魅力も合わせて引き上がったように思う。『Meta Quest 3S』よりも重心バランスやフィット感、なにより画質が一段階上だ。基本価格は約10万円だが、懐に余裕があるならばこちらもよい選択肢になる。「ワンランク上のハイエンドモデル」として、ちょうどよい位置につけた印象だ。 もっとも、多くの人にとって「未知のデバイス」であるVRヘッドセット。発生し得る出費は可能な限り抑えたい人が多いだろう。先代である『Meta Quest 2』は、多くの人がVRに触れる機会を作った普及機だったが、2024年内に終売が告知されている。VRデビューに最適な一台が不在となる可能性があったが、『Meta Quest 3S』はこの座を継承してくれるはずだ。少なくとも、『Meta Quest 2』の中古機を探すよりは、新品の『Meta Quest 3S』を購入したほうがベターだ。
浅田カズラ