「M-1グランプリ2024」鑑賞記――そこにはただ、輝く漫才があるだけ
決勝戦 ファーストラウンド
システム変更された23年から特に敗者復活戦の鑑賞カロリーが高く、本編の決勝戦にたどり着くまでに鑑賞側もかなり消耗している。それをミーム化すると「お風呂に入る時間がない」ということになり、文字通りずっと「M-1」にかじりついていることになる。一息ついたところで始まる決勝戦の華やかな演出と舞台を見て、ここでようやく“Mおじ”よろしく「M-1やなあ」と実感する人も多いことだろう。夏から始まった戦いももう今日で終わりだと思うと感慨深くなり、最後の日までネタができる組、そして一番多くネタができる組は幸せだろうと思いをはせる神聖な時間となる。さて、ここからは順を追ってそれぞれのパフォーマンスを振り返る。
決勝戦 ファーストラウンド(TVer) 決勝戦 FIRST ROUND 前半戦 1~5組目 https://tver.jp/episodes/epe7627fyg 決勝戦 FIRST ROUND 後半戦 6~10組目 https://tver.jp/episodes/eppbvdgnqj
令和ロマン
「M-1」鑑賞者にとっての知名度は間違いなく100%だろう令和ロマン。消費されないように戦略を練りつつも本来なら半月ほどで行うファイナリストとしてのプロモーションを1年かけて行ってきた。本人たちはヒールであろうとしていたがおそらくそれも計算で、1年間ずっと、人々から連覇を願われた存在だった。阿部一二三選手が笑御籤(えみくじ)を引いた時、全ての運命が決定づけられた。トップバッターということはつまり勝てると、昨年の経験から全員が脊髄反射的に思ったことだろう。彼らがせりあがって来た時、全員が令和ロマンの登場を待ち望んでいたという空気に包まれ、会場自体の高揚感は早くも最高潮を迎えた。おそらく多くの人が連覇を予感し、「ということはこのあとが低調になるとまた、彼らの望みが果たされないのでは?」というところまで爆速で思考を巡らせたことだろう。大会自体の展開への一抹の不安はありつつも、令和ロマンのこと自体はもう誰も心配していなかった。手垢のついた言葉で言うなら、運命が味方をしていて、実力があるからどんな状況も「運がいい」状態にしていっている。もはや全員が忘れていると思うが、昨年まではトップバッターは死刑宣告ではなかったか? しかし彼らはそんな悲壮な呪いをすべて解いていった。自分自身のために、そしてお笑いの未来のために。