「M-1グランプリ2024」鑑賞記――そこにはただ、輝く漫才があるだけ
敗者復活戦(TVer) Aブロック 1~7組目 https://tver.jp/episodes/ep1v68to4i Bブロック 8~14組目 https://tver.jp/episodes/epqe3e59zn Cブロック 15~21組目+結果発表 https://tver.jp/episodes/epyf3jw4uk
ダンビラムーチョ(Aブロック)
得意としている歌唱要素も取り入れつつ虫を顔芸で表現するという、構造としてはかなり技術が必要な漫才をやってのけていた。非常に牧歌的なモチーフとムードに、フニャオ氏のちいかわのようなツッコミがベストマッチし、言語化の外にある「なぜその顔がその虫なのか」という疑問と「でもなんとなく分かる」という暗黙の共通認識があぶり出されて笑いを誘う。ちいかわの世界のような、あるいは故郷の長野や山梨のような広大で神秘的、だが畏怖を感じさせる自然が喚起され、ほかではあまり見かけない唯一無二のネタとなっている。
滝音(Bブロック)
滝音がひさしぶりに敗者復活戦に出場するということで、高揚を隠し切れないお笑いファンも多かったことだろう。圧倒的に洗練されたネタは聴く者の心地よさを刺激する。これまでの主な彼らの落選理由は、主軸のなさや必然性のないワードの無理のある挿入が挙げられがちだが、今回は全てが解決されていた。かつ、ものすごいスキルアップをしていたように見受けられる。努力の積み重ねで常にゾーンに入れることを可能にしていた。全ての展開にもワードにもまったく違和感がなく、ストレートでの決勝進出も不可能ではなかったと確信した。しかしそんな滝音が、同じく大阪の「よしもと漫才劇場」出身のマユリカや豪快キャプテンと同じブロックで戦わなくてはならないなど、なんという悲しいことだろうか。
インディアンス(Cブロック)
かつて国民投票時代の敗者復活戦での復活を果たしたことがあるため、ちょうどいい塩梅を知っているのでは、という視点で有力視されていたインディアンス。今回のネタは劇場や寄席ではかなりウケていた。出ハケをネタにする漫才やメタなものは予選の審査員には評価がされにくいとされているが、芸人審査員かつ客席審査の場合はそのロジックはたしかに無効化されていて、非常に盛り上がりやすいものとなっていた。しかし細かい要素なども大いに含んでいるため、大きいハコよりは劇場の方が分かりやすいネタではあるだろう。