トヨタとダイハツの関係は、”ドライ”から”ウェット”へ ダイハツの会見を受けてトヨタ中嶋副社長が報道陣に答えた
トヨタのアンドンシステムとは?
Q:トヨタのアンドンのシステムをダイハツにも入れるのか? それともダイハツ独自のシステムにするのか? 中嶋副社長:難しい質問ありがとうございます。アンドンという言葉で言うのは簡単ですけれど、一番大事なことは、現場の最前線で予期せぬ不具合が起こったとき、ぱっと手を挙げてですね、こんな不具合が起きていますという風に、その情報が、理想であれば、その日のうちにトップまで入り、トップが、トヨタのトップダウンはトップが自ら現場に降りて、何が起こったんだという風に一緒に見に行く。ま、そういうコミュニケーションができていることが私はアンドンの紐を引くということだと思っています。生産のシステムで起きますと、作業者の方がやばいと思って止める、そうすると職長の方が飛んできてサポートをする、その結果、もう一度紐を引き直してクルマが流れていくということでございますので、アンドンの紐を引くシステムというよりは、言葉難しいんですけど、最前線のメンバーが本当にトップに気兼ねなく声を上げられるという体制、上がったらすぐトップは現場に行くという姿勢、そういうのは現地現物という言葉で我々大事な哲学としてトヨタ自動車では受け継がれているつもりですし、トヨタ・グループが展開しているつもりでございました。これが謝罪会見の時でも言われましたが、残念ながらできてないじゃないかという厳しいお言葉いただき、それを認めざるを得ない状況だったと思います。それはダイハツ、日野自動車S、豊田自動織機のみならず、トヨタにおいてもそれが100点でできているとは、当然思ってございません。今回のこういう不正を受けて、やはり我々がすべきことは現場のマネジメント、現場の人が挙げた声にすぐ反応していくという。その現場に主権を取り戻す。まさにグループ・ビジョンで豊田章男が語った内容を実践していく以外にないと思います。何かシステム的なものができて、これをそのまま実行すれば絶対できるっていうのは、逆効果な気がします。形だけで整えてしまって、それで安住すると現場に行かなくなるので、何かがあれば現場にいる、もっと言うと、日頃から現場に行っていれば、なんとなくこの装置に埃がかかっているなと思うと、ちゃんと使えているっていう風に気づくと思うんですね。こういう現場へ行くことによる日常のコミュニケーションが実は一番の近道だと信じて進めてまいりたいと思います。 Q:不正に対する、DX化、IT化がダイハツは遅れているという話を先ほども星加さん(ダイハツ副社長)からあった。トヨタのシステムとして今後統一していく、DX化でもっと統一するという考えは? 軽に関しては認証はダイハツが行なう事実上OEM供給という形が続くという認識でいいのか? 中嶋副社長:二点目を先にお答えします。軽に関しては、ダイハツのメンバーでOEMの供給という従来の姿勢にまったく変わりはございません。ただ、それを実行するためにこの年末に出る法規に向けて、今国交省さんの指導を受けながら、ダイハツのメンバー、トヨタのメンバー、一部入り込んでいますけど、一緒になって仕事のやり方を変えていく、正しい認証になってるかを一点一点チェックしながら、ある意味しっかりとそこで勉強させていただきながら、そのステップを一緒に学んでいるという状況でございます。当然、そのステップを経て、今後もダイハツが、特に軽自動車は我々に知見があるわけではございませんので、彼らが正しい仕事を正しくできるという環境に今回の法規でしっかり対応して、国交省にお墨付きをいただきながら、結果としてダイハツが軽ではOEMメーカーとしてしっかりとやってもらうということだと思います。 DX化っていうのは、実はトヨタも非常にこれ悩ましいところでございまして。法規は、皆さんちょっと専門的にありますけど、結構文章で書かれているんですね。それをどう解釈するか。だから、法の精神という意味ではしっかりとリスペクトできるんですが、それを実際に実行しようとすると、評価方法だとか、 その手続き論だとかで、このやり方で本当にいいのかどうか。これは実は各国当局の皆様と自分たちが疑問に思ったことはご相談に上がるんですね。ご相談が確かに法はこうだけど、実際に評価しようとするとこういう難しさがあるねっていうことをご理解いただき、じゃあ評価方法はこうしようかという、ある意味この文面に書いていることと、それを実際に実行するためのプロシージャーと言いましょうか、それは相談しながら各自動車メーカーに落としていくというか、そういう作業でございます。まずもってそこをしっかりと理解するというのは、DXの前にこの精神をしっかり理解し、法を順守し、それをよりリアルワールで実現できる方法、評価法なるものを一緒にやって勉強する。ここはDXというよりはそのやり方について議論だと思います。で、たくさん法規がございます、トヨタだからそのチェックシステムがございまして、そこに文言を入力すると法規に不適合の場合は自動的にそのマークが出るだとか、これうまくいってないよ、これこのままだと通らないよ、書き方が間違っているよっていうチェックシステムはあります。で、法規も毎年のように更新、更新されてまいります。1年で何度も法規が変わるので、社内にはその法規が変わったという連絡だけでも大変な量なんですね。これは、海外になりますと現地用語で書かれていますので、まずそれを翻訳するとこから始まりますし、こういう手続きのところによりDXを使い、人の手が入ることによる間違いっていうのは防ぎたいと思います。チェックするという行為であれば、できれば機械にやってもらった方がより公平な目で見てくれる。AIが叫ばれておりますので、AIを使ってチェックするようなこともできれば、より現場への負担は減ると思います。複雑になってくる法はあくまでお客様を守るための法でございますので、これはやっぱり実行していかなきゃいけない。それを効率よく法律を遵守できる形で我々が手続きとしてやらないとクルマを出すタイミングががどんどん遅れてしまい、もうその出した頃には次の新しい法規が来てるなんてことがもしかしたら起こるかもしれないっていう課題は、自動車業界全体が持っている課題ではないかと思います。ご指摘いただいたDX化というのは、これ業界向けての取り組みという認識でございますし、それから、昨今議論されているのは、データの中で認証が取れないかみたいな部分も、一部議論をされております。すべて物を作ってまいりますと、どうしても非常に時間がかかります。能力もかかります。それをデータで保証するというやり方はないだろうかといった、次のステップに向けた認証というのも議論が始まっているという風にご理解いただければと思います。 Q:OEMから委託に切り換えるのは小型車全般になるのか。それは海外も国内も問わず? 中嶋副社長:我々が考えているのは、小型車はトヨタも一定の経験はございます。先ほど言ったように、海外の小型車に関してはダイハツさんがより能力をお持ちなので、それをプラスするという意味で小型車に関してはトヨタも知らないっていうわけではないので、一緒になって強みをあてることでは補完し合いながらできるだろうということで、軽を除く事業開発行為、認証行為までは一旦トヨタが責任を取る形で委託という形でお願いしようと思っています。 Q:一旦? 中嶋副社長:はい。一旦っていうこと。今後ずっとそのトヨタがやるなんてことは、なかなかないので、状況変わればまた変わるかもしれません。それはその時の最もいい、お互いが一番力を発揮できる形態を選ぶことではないかという風に思います。ただ、今の段階でどうのこうのではなくて。まずはお客様の信頼を一緒になって汗をかいてしっかり取り戻すことだと思いますし、そのなかで我々がダイハツから学ぶダイハツがトヨタから学ぶ、冒頭申し上げました、そのドライな関係から少しウェットな関係でその結果我々も学べるところがたくさんあると思います。お互いが強くなってお客様により商品届けられるってなるのがベストな回答ではないかと思っています。それに向けて頑張ってまいりたいと思います。 Q:ダイハツの軽はダイハツが認証する? 中嶋副社長:そうです。
MotorFan編集部