トヨタとダイハツの関係は、”ドライ”から”ウェット”へ ダイハツの会見を受けてトヨタ中嶋副社長が報道陣に答えた
トヨタの小型車戦略の見直しは?
Q:トヨタの小型車戦略について改めて確認したい。ダイハツとスズキが小型車と提携はしているが、その棲み分け、戦略の違いを改めて整理してほしい。 中嶋副社長:スズキさんはスズキさんが得意な部分、ダイハツが得意な部分ございます。で、志が非常に近しい会社だという風に我々認識しております。お客様にもっといいクルマを良品廉価でお届けしようという考え方は、この3社とも共通した認識だと思うんですね。それぞれの今の得意な領域、得意な地域があると思います。それぞれでより良い結果がもたらされる構造が必ずあると思いますので、これは三社でというよりは、スズキとトヨタ、それからダイハツとトヨタ、それぞれの強みを生かしてどういう商品ができるかというのを、それぞれの会社と議論しながら決めていくことだと思います。当然お客様から要求されるクルマを作れるかどうかにかかっているかと思います。 それぞれの各社の力を合わせて、お客様にお送りいただけるクルマを一日も早くお届けするということを進めていくということでございますので、都度その状況というのは変わってまいります。 その事業の範囲だとか役割分担はそもそも変わるかなという認識でございますので、これからまずはダイハツのしっかり再発防止をし、お客様から、安心・安全と思っていただける、まずそこが第一優先でございます。その上で、それぞれの強みを生かした事業計画まで考えていくという予定でございます。 Q:3社でのパーツの供給共有とかとか、あるいはプラットフォームの共有化とか、連携して小型車戦略をやり直すことはないのか? 中嶋副社長:それはもう、まさに手段のことをおっしゃっていただいていると思いますので、その時に最もいい手段を選ぶというのが企業活動を進めていく上での常套策だと思います。今、残念ながらストップしております3社で開発を予定しておりました商用の軽BEVの例でございます。これは、開発の主体は誰がするかだとか、お客様の情報を誰が取るかとか、それぞれの強みを生かして3社で協議するという形をとっておりました。残念ながら、今ダイハツの件で開発が止まっておると。これを再スタートするかということを議論中ではございますけれども、まさにそういったプロジェクトから3社の強みを生かした展開ができるんではなかろうかという風に期待しております。 Q:あらためて、今回、このダイハツの新事業方針の考え方について聞きたい。もっと別なダイハツの新事業のやり方あったんじゃないか? あらためて、今回のこの形にした狙いを聞きたい。 中嶋副社長:まずは、やはりクルマづくり、ものづくりをしている会社、群でございますので、やはり一丁目一番地は安心安全なクルマをお客様にお届けする、これに尽きるかと思います。まずもって、その本業である自動車を作り、お客様にお届けするということが事業の根本の生業ですから、それがしっかりとダイハツとして再生できるように我々としても支援するのがスタートラインですね。当社、トヨタの佐藤社長から言われていますモビリティコンセプト、非常に多岐に渡る話でございますけれども、そのなかには必ずラストワンマイを担うクルマだとか、よりパーソナルに近いクルマはあるかと思います。軽を中心とした再生ということからすると、その軽の領域から近い比較的小さなモビリティのエリアはダイハツが主体となって担っていくことではないかと思いますけど、まずはそこの、そういう考えはですね、当然、トヨタ・グループとしても議論はしてございます。ただ、足元はしっかりとお客様に安心というお墨付きをいただくことにまずは注力するということだと思っております。 Q:そうであれば認証の部分以外にも、トヨタが例えば小型の部分をやる選択肢もあったと思うが……。 中嶋副社長:いや、考えがあるかないかっていうことじゃなくて、やっぱり強みを生かすっていうことだと思うんですよね。ダイハツも長い歴史の間、特に彼らの強みっていうのは、お客様のところに現地に通い、お客様の使い勝手だとかさまざまなご意見を聞いて、それを開発にフィードバックする。そして、よりその原価に対しても、例えば設計者の実力で言いますと、自ら部品を見積もることができる設計者が(ダイハツには)たくさんいます。これは正直トヨタなかなかできてないとこでございまして、そういったお互いの強み弱みを補完し合う関係というのがグループの連携だと捉えていいのではなかろうか考えてございます。そういう意味では、今の開発の強みを活かすというところがまずスタートラインにあったという風にお考えいただければ、ご理解いただければと思います。 Q:今回、新興国小型車カンパニーが解消される。アジア戦略の要の組織だったと思うが、この影響は? 戦略の見直しは? 中嶋副社長:まずもって、繰り返しになりますが、お互いの強みを生かすっていうところが、グループとしても、最大のミッションだと思ってございます。我々が目指すモビリティ社会のために、モビリティカンパニー、変革するために、グループの強みを生かして、ある意味効率的に弱みを補完し合うことによって自分たちが新たに力をつけると、こういう考えでございます。そういう意味で、アジアの戦略と言われましたが、まず当然アジアは本当に我にとって重要なマーケットのひとつでございますし、長年にわたって我々の先達たちが、現場で汗をかきながらお客様のご意見を聞き、ちょっと手前味噌ではございますが、各国の”国民車”になろうという思いで開発をしてまいりました。先ほど申し上げましたように、開発のメンバーは本当に、地域は限定されるかもしれませんけど、本当に現場で活動してくれております。私自身も過去にIMVというクルマを担当した頃に、新興国にたくさんお邪魔しましたが、そのなかでアンダーIMVという小さな、私担当しているダイハツのメンバーともしょっちゅう会いました。必要な時は一緒に調査やお客様の元に通い、お話を聞いたりもしました。例えば、小さなクルマから我々の大きなクルマに乗り換えていただくにはどのような施策をすればいいのか等の意見ですね。そういう意味では、コラボレーションしてまいりました。ただ、今回やっぱりベースとなるのは、しっかりとクルマづくり、ものづくりのところのまず一丁目一番地の安心といったところにダイハツ自身がその信頼を取り戻すということ。それに、海外の認証に関してはトヨタが少し長い経験もあるのでサポートするところもあるだろうということで入らせてもらうのがまず一丁目一番地なんですね。これを実現するために、元々ECCカンパニー(EmergingCountryCompactCarCompany)というのが、ある意味そのダイハツの独立性。それからOEM供給していただくということを前提に作っていたカンパニーだったというのもありまして、責任の所在を明確にするためにも、今回はトヨタコンパクトカーカンパニーが企画の一端を担い、それを委託という形で開発に出し、ダイハツの開発行為をするメンバー、お客様とかに通って意見を聞くメンバー、彼らはそこは得意ですから、彼らと一緒にコラボすることにより、で、かつものづくりを我々は学ぶことにより、できればウィンウィンの関係で、よりお客様に喜んでいただけるアジアのコンパクトカーが作れるんではないかと考えています。こういう問題を起こしましたけれども、次の未来に向けて大きなステップに舵を切りたいという思いで今回こういう組織変更をさせていただきました。ふたつ目のご質問あった事業戦略の質疑はですね、非常に難しいと思っています。状況が時々刻々変わってまいりますので。そのためにトヨタはそれぞれのカンパニー制でそのクルマのことを一番に考える連中がいてくれる。その国々で地域担当がいて、毎週のように会議と我々ミーティングしているわけです。こう状況は変わったよ、実はこんな動きが出そうだよっていう情報を、いつもシェアードマネージメント言い方していますけど、まさにチーム経営という形で、地域にCEO、カンパニー制のリーダーそれぞれが集まって情報共有しながら、今行く道はどこが一番いいんだろうか、それから10年後は難しいですけど、どういう方向性にあるべきか、そういったことを議論しながら、都度、戦略も必要であれば変えながら進めているという風にご理解いただければと思います。 Q:中嶋さんは、トヨタの副社長でもあるんですがCJPTの社長でもある。CJPTにダイハツが復帰する要件は? 中嶋副社長:CJPTの代表として申し上げることは、やはりお客様からの信頼取り戻せるかどうかという風につきます。これは定量的に言えるわけではございません。日野の場合もそうでした。やっぱりお客様のところに日々通ううちに、最初はやはり「どうしてくれるんだ」という厳しいお言葉から「応援してるよ。そろそろ環境に優しいクルマをやらなきゃいけないじゃないか。そういえば、いや元々やっていたよね、うち使うよ」こういうお言葉をいただきながら、これは実際に経産省等々も一緒にプロジェクトを進めていくという、ちょっとそのタイミングだったっていうのも相まってですね。やはり最初に環境車を導入することの難しさ、それが本当に各企業にとってメリットなのが、デメリットな、いや、これは地球環境に対して、日本社会に対してやるべきだ、どんどんムーブメントが変わってきました。そのなかで日野に対するご理解をいただけたということだと思ってございます。で、軽のバッテリーEVに関しましても、予定では本年最初の頃に出す予定でございました。本当に高い期待をたくさんいただいておりまして、あるお客様からは、まだ細かいスペックはお示してないんですけれども、やはりこのラストワンマイルとカーボンニュートラルの両立を図るために「出たらこのぐらいの台数を契約したいよ」というようなお言葉をたくさんいただいておりました。そういう意味では、本当に高い期待をいただいておったのに、結果としてそれを裏切ることになったことは、CJPTの社長としてもお客様にお詫びするべきことだと思ってございます。これも先ほどの日野の例にありましたように、開発はダイハツも当然入り込んでやってまいりますので、ダイハツ、スズキ、トヨタが、個別の会社としての活動になりますけれども、お客様のものに通い、お客様のやはり必要なスペックを理解し、それを良品廉価に届ける。そういったなかで、多分、活動を通じて、「ダイハツ、そろそろ頑張れよ」と、「しっかりと軽のバンのBEVでも提供してくれよ」「CJPTで頑張れよ」と言っていただく声が増えた時が復帰のタイミングだと思ってございます。(軽バンBEVの)開発自体は、ダイハツ・トヨタ・スズキ開発3社でしっかりとやっていくということはすでにトップとも了解を取り付けていますので進めてはまいりますが、大事なひとつのピースであるダイハツがまだ今再生の途上だということもありまして、詳細計画は新会社の発表がありましたので、これから議論を進めていくという風にご理解いただければと思います。