「トランプ政権2.0」となった場合の日米関係は?:同盟の行方に不安材料見えず
個人的関係を再び結べるか?
日本は故安倍晋三首相が、トランプ氏との個人的な関係構築に成功したが、日本の指導者はそれを再現できるだろうか。安倍首相は国内でコアな保守支持層に支えられ、一般にも人気がある長期安定政権であった。また安倍氏自身が、米国との強固な同盟維持が最重要の国益と考えており、米国の指導者が誰であっても良好な人間関係を築く覚悟があった。 安倍政権当時、外務省の友人と話した際に、安倍首相がトランプ大統領に対して敬意をもって接したことが、良好な関係を築くことができた理由だと語っていた。裏を返せば、トランプ氏が大統領就任当時、欧州の指導者は、軒並みトランプ氏に敬意を持って接しなかったために、緊密な人間関係の構築ができなかったともいえる。 例えば、2019年12月のNATO首脳会議において、トランプ大統領の長い記者会見をジョークのネタにしていたカナダのトルドー首相と英国のジョンソン首相の音声が流出した。トランプ氏は首脳会議後に予定していた記者会見をキャンセルして帰国したが、「トルドー氏には裏表がある」と批判している(※9)。 トランプ氏が、NATOの同盟国と民主的価値や同盟の意義を共有していなかっただけでなく、欧米の独特のエリート倶楽部の雰囲気に溶け込めず、首脳会談の席で「浮いていた」状況が想像できる。 一方で、この出来事の約2年前の2017年11月5日、安倍首相は、訪日したトランプ氏と親密なゴルフをした(※10)。これも外務省の別の友人から聞いた話だが、その際に国際会議の経験が少ないトランプ氏は、安倍氏にG7サミットの雰囲気などについて詳細に聞いていたらしい。エリート然とした欧州の首脳には聞きにくかったのだろう。 岸田文雄首相、あるいは次の首相が安倍氏の経験から学べる点は多い。トランプ氏に対して敬意を持って接することは、日本の保守政治家にとって難しいことではない。ただし単に礼儀正しい態度だけでは、トランプ氏との人間関係を築けないだろう。そのためには国内の政治資本が必要となる。 トランプ政権は17年1月に始動したが、その時期には第二次安倍政権が成立して丸4年が経過し、安倍氏の支持率は高かった。安定した支持基盤は、トランプ氏への接近について、野党やリベラルメディアからの批判を跳ね返すだけの政治資本を安倍氏に与えた。 25年にトランプ政権が成立した場合、その時点での日本の首相が安倍氏のような政治資本を持っている可能性は低い。安倍政権では外相を務めた岸田首相は、21年10月から続く長期政権ではあるが、現在の支持率は低く、秋の自民党総裁選での再選にも黄信号が灯っている。 この点で、日本の首相がかつての安倍氏のようなトランプ氏との個人的な関係を築くことができるかどうかは、神のみぞ知るということになる。ただ日本にとって朗報なのは、同盟国としての日本の存在がかつてないほど地政学において重要となり、それを理解している安全保障スタッフが、トランプ政権2.0に入る可能性が高いことだ。