「トランプ政権2.0」となった場合の日米関係は?:同盟の行方に不安材料見えず
トランプ氏の最優先課題は?
トランプ氏が大統領として再選された際の最優先の課題も重要だ。身もふたもない話だが、自身にかかる4つの刑事訴追とトランプ氏が経営する不動産企業「トランプオーガニゼーション」への民事訴訟などを、大統領時の権限を使って、できるだけ軽くすることだろう。それなしには、4年後の大統領退任の際には、待ち受ける多くの訴訟に対処するために自身の築いてきた財産とビジネスを失いかねないからだ。 トランプ氏は前大統領時代に、自分には自分を恩赦する権限があるとたびたび語っている(※5)。しかし、ニクソン前大統領がウォーターゲート事件で訴追されそうになった際の司法省の見解は、大統領には自分自身を恩赦する権限はないというものだった(※6)。 ただし、ニクソン氏は議会の弾劾を受ける前に大統領を辞任し、1974年9月、副大統領からに昇格したフォード大統領が、「国家を分裂から救い団結させるため」という理由で、起訴される前のニクソン氏を恩赦した(※7)。この恩赦は当時は大きな批判を浴びたが、歴史を経てニクソン氏の米国外交への功績などが再評価される中で擁護する声が増えてきた。ニクソン氏が、ヘンリー・キッシンジャー国家安全保障担当大統領補佐官とともに米国をベトナム戦争の泥沼から抜け出すことに成功したからだ。キッシンジャー氏は、73年1月23日にニクソン政権の特使として、北ベトナム政府とパリ和平協定をまとめた功績でノーベル平和賞を受賞した。ウォーターゲート事件がなければ、ニクソン氏がともに受賞してもおかしくなかった。 トランプ氏が自身のノーベル平和賞受賞にこだわるのも、そのあたりの計算がありそうだ(※8)。トランプ政権2.0の外交優先順位は、本人が公言している「24時間以内のウクライナの停戦」といったノーベル賞級の外交実績にあると思われる。世界が歓迎するような実績があれば、例えばトランプ政権の副大統領が大統領に昇格をして、トランプ氏を恩赦するハードルは低くなるはずだ。 したがって、トランプ政権は4年の間に着実に成果を上げることができる外交成果を優先するはずだ。ウクライナでの停戦、北朝鮮の核合意などが優先され、内部からの抵抗で時間がかかりそうな台湾の地位をめぐる中国とのディールなどの優先順位は低くなるはずだ。 中国に圧力をかけるためにも重要な日米同盟は、中国との経済競争を勝ち抜きたいトランプ大統領にとっては重要なツールのはずだ。そして、すでに1期を経験しているトランプ政権の任期は4年であり、トランプ氏にとっても残された期間は短い。着実に優先順位の高い課題に取り組むしかないはずだ。