兵庫県知事が「辞職より失職」選んだことで維新が被る大迷惑、別の候補を擁立して斎藤氏と“決別”できるか
兵庫県議選は1995年1月に発生した阪神・淡路大震災の影響で投票日と任期に「ずれ」が生じていたが、関係者の努力で2023年4月の統一地方選でようやく解消されたという経緯がある。にもかかわらず県議会を解散すれば、また「ずれ」が発生しかねない。 ■解散を避けたのは「維新」のため? そして何より斎藤知事が重視したのは、16億円かかるといわれる県議選の選挙費用の問題だろう。公用車をセンチュリーからアルファードに替えるなど「身を切る改革」をアピールしてきたにもかかわらず、県民に不要に多大な負担を強いることになるからだ。
またあえて県議会の解散を避けたのは、2023年4月の県議選で4議席から21議席に躍進した兵庫維新の会のためではなかったか。 維新は自民党とともに、2021年7月の兵庫県知事選で斎藤知事を推薦。投票日前日には、吉村洋文大阪府知事と松井一郎大阪市長(当時)が三宮駅前で応援演説を行った。そして一連の告発文書問題で維新は当初、百条委員会設置に反対した。維新が斎藤知事に最も近い政党であることは間違いない。
しかし世論はそれを許さなかった。8月25日に行われた箕面市長選では、維新の現職がダブルスコアに近い票差で惨敗した。維新を激震させたこの敗北は「箕面ショック」と名付けられ、その原因は隣県で発生している斎藤知事のパワハラ問題と見なされた。 だから兵庫維新の会は9月9日、斎藤知事に辞職と出なおし選挙を申し入れたのだ。すでに自民党やひょうご県民連合、公明党や共産党などが9月12日に辞職の申し入れを予定していたが、それに維新が先駆けたのは、それだけ「箕面ショック」が大きかったからだろう。しかしドミノは止まらなかった。9月22日に行われた大阪府議摂津市選挙区補選でも、維新の公認候補が敗北した。
このような状態で斎藤知事が県議会を解散すれば、維新は壊滅的な打撃を受ける。それにとどまらず、近く行われるとされる衆院選にも少なからず影響するはずだ。 維新は2021年の衆院選で11議席から41議席に躍進したが、この「告発文書問題」に加えて衆院京都4区では「スパイ疑惑」が発覚し、候補者が公認を辞退する騒動に発展した。また千葉県千葉市議会では請願偽造問題も発生し、党勢の衰えは著しい。 最大の問題は斎藤知事がその地位に執着していることだろう。だが、2021年の県知事選で斎藤知事が得た85万人の兵庫県民の負託は、2023年の県議選で選ばれた86名の県議全員による不信任で上書きされている。