パリ五輪出場権の混乱、問われる国際バレーボール連盟の説明責任
【ベテラン記者コラム】 「あれ? ひょっとして日本のパリ五輪出場はもう決まってるんじゃないのか、これ」 正直、首をひねった。6月13日夜のことだ。バレーボールのネーションズリーグ(VNL)女子・福岡大会。五輪出場権を目指して戦ってきた日本は、この日、カナダにフルセットで敗れて1次リーグ7勝3敗に。試合後、世界ランキングポイントを計算して感じた。 報道されている通り、バレーのパリ五輪出場権付与は非常に複雑な過程を経た。開催国フランスのほか、昨秋の五輪予選で6カ国が獲得。残る5枠はVNL1次リーグ終了時点の世界ランキングでアジアとアフリカの1位に加え、それ以外の上位3カ国に与えられる。 問題は、その世界ランキングのシステムで、国際連盟(FIVB)が2020年2月に導入した新方式では、試合ごとにあらかじめ決められたポイントが加減算されて順位に反映される。ポイントは、勝敗や内容(得失セット数)だけでなく、試合前の世界ランキング順の差でも違ってくる。 下位のチームが上位に勝てば多くのポイントを稼げ、逆に下位に負けると大きくポイントを失う。Aチームが大会初日にBチーム、2日目にCチームと対戦する場合、A対Cで勝者がどれほどポイントを稼げるかは、少なくともA対Bが終わらないと算出されない。 さて、FIVBは五輪出場国の正式発表について、あくまでVNL1次リーグ最終週である福岡大会と、同時開催の香港大会の全試合終了後としていた。だが13日のカナダ戦を前にメディアには「日本が勝利した場合に限り試合後にセレブレーションが行われる」と通達があった。日本の五輪切符獲得が事実上決まるということをFIVBが認めたことになる。 それがカナダに負けて「持ち越し」との報道になった。じゃあ、どの時点で決まるかというと、切符を争う中でランキングの低いカナダとオランダの一方が日本に届かないと確定した時点だ。日本がカナダに負けた時点で日本との差はオランダが29.91点、カナダは32.7点。両者は14日に直接対決し、負けた方は日本との差が30点以上になる。カナダは15日にフランス、オランダは16日に韓国との対戦を残すが、どちらも相手が下位で加点は少なく、日本には届かないと予想できる。 14日が休養日の日本は15日にセルビア、16日に米国と対戦。どちらもランキングで近接しているので、負けても大きくポイントを減らすことはない。その時点で30点前後の差だから、日本が連敗し、オランダやカナダが連勝しても「ひょっとしたら届かないのでは…」と思った。ただ14日のセルビア対フランスが終わらないと、日本対セルビアのポイントすら分からず、確信はなかった。