「パブロフの犬」のかわいそうな犬たちの“その後” 誰もが知っている有名な実験がもたらした問題
世の中はめまぐるしく変化している。未来を正確に予測できる人は誰もいない。しかし、どんなときも“人間の本性”は変わらない――. 『SAME AS EVER この不確実な世界で成功する人生戦略の立て方』では、世界各国で600万部と大反響を呼んだ『サイコロジー・オブ・マネー』の著者、モーガン・ハウセル氏が、お金からさらに視点を広げ、どんな時代がきても賢くサバイブするための「人生教訓」を伝授してくれます。 本稿では、同書から一部を抜粋してお届けします。
■強いストレス3週間で「人は獣になる」 強制収容所に15年間にわたり収容された、詩人のヴァルラーム・シャラーモフはかつて、ストレスと不安にさらされたごく普通の人々が、いかにあっという間に正気を失ってしまうかについて書いた。 善良で正直で愛情深い人も、基本的な生活必需品を剝奪されたら、生きるためならなんだってするような、モンスターに変わり果ててしまう。強いストレスがかかると、「3週間で人は獣になる」と、シャラーモフは書いている。
歴史家のスティーヴン・アンブローズは、第二次世界大戦中の兵士たちの変化について記録している。 基礎訓練を終えた兵士たちは、自信と虚勢に満ちあふれ、前線に加わることや戦うことを熱望した。しかし、いざ銃撃されると、すべてが変わった。アンブローズはこう書いている。 「訓練で戦闘に備えられるわけがない」 銃の撃ち方や命令への従い方は教えてもらえるかもしれない。しかし、「機関銃の砲火が飛び交う戦地で、銃弾の破片の雨が降りしきる中、無力に横たわる方法を教わることはできない」。
実際に経験するまで、誰も理解できないのだ。 これらは極端すぎる例である。 しかし、ストレス下にある人々が、ストレスのかからないときなら決して受け入れないようなアイデアや目標に飛びつくことは、歴史のそこかしこで起こっている。 第二次世界大戦後、94パーセントの税率が適用された。 1920年代までは低税率が最も人気のある経済政策であり、増税を提唱する者は片隅に追いやられていた。しかしその後、世界恐慌と戦争の二重苦ですべてが崩壊した。