【無効になるとどうなる?】きちんと遺言書を準備していても「無効」になることってありますか? 無効になったらどうなるのでしょう?
相続対策として、遺言書の作成を検討される方もいらっしゃると思います。遺言書の作成は、遺産分割対策として有効です。しかし、遺言書をきちんと準備していたつもりでも、無効となる可能性はあります。 遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。本記事では自筆証書遺言について、無効になるケース、無効になったらどうなるのかについて解説します。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
自筆証書遺言の方式に不備があると無効になる
自筆証書遺言について、民法第968条では以下のように規定しています。 (自筆証書遺言) 第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。 2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉に署名し、印を押さなければならない。 3 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。 出典:e-Gov法令検索「民法」 この条文は自筆証書遺言の作成について規定したものであり、この条文に則して作成していない遺言は無効となります。
民法に違反すると無効になる
上記以外にも遺言が無効となるケースがあります。例えば、以下のようなケースです。 ・遺言の内容が不明確である ・2名以上の方が共同で作成している ・遺言能力・意思能力がない方が作成している ・公序良俗に違反している 遺言の内容は、「誰に何を相続させる」というものであり、具体的に記載しなければなりません。例えば、単に「預金を息子に相続させる」「不動産を娘に相続させる」といった遺言は、内容が明確ではない(対象が特定できない)ため無効となります。 2名以上の方が共同で遺言をすることを「共同遺言」といいます。共同遺言は民法第975条で禁止されているため、共同遺言を行った場合、その遺言は無効となります。 民法第961条には遺言能力についての規定があり、「15歳に達した者は、遺言をすることができる」としています。 また、民法第3条の2には意思能力についての規定があり、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」としています。したがって、遺言能力・意思能力がない方が作成した遺言は無効となります。 民法第90条には公序良俗についての規定があり、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」としています。例えば、不貞相手に全財産を相続させるといった内容の遺言は、公序良俗に違反するとして無効となります。