修行を積んでから独立できる?雇われ士業のリアル (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
■社会保険労務士、税理士事務所は比較的門戸が開かれている
これに対して、社会保険労務士や税理士事務所は比較的求人募集があるといえます。 社労士事務所、税理士事務所の採用に特化した求人情報サイトもあるくらいです。そのため、社会保険労務士、税理士でキャリアアップしたいという場合は、地道に求人情報を探すことによって就職が可能です。 しかしながら、専門スタッフの場合、未経験・無資格で誰でも入所できるというわけでもなく、税理士事務所なら簿記1級など一定の資格や具体的な経理経験などが問われます。そのため、縁があったとしてもすぐ職に就けるわけではないことは事前に押さえておきましょう。 特に税理士事務所の場合は、税理士試験を受験しながら税理士事務所に勤務し、数年経ったのち独立開業するのが一般的なので、事務所それぞれの状況にもよるものの、退職から独立開業への流れは、一般の企業よりはスムーズに行く場合が多いといえます。 ところで、あなたが就職する前にぜひお伝えしておきたいことがひとつあります。それは、「実務を覚えたらすぐに独立開業したい」と考えている点についてです。 私たち士業は、日々法改正や手続きの運用の変更などに追われ、その中で実務の能力を高めています。時にたったひとつの案件に数日かかってしまうこともあるでしょう。何年もかけ、あるいは何百万円という自己投資をし、知識や経験を積み重ねてきているのです。 そして、もしあなたが就職すれば、どこの事務所でも先生が丁寧に教えてくれるでしょう。「実務を教わる」ということは、そういった先生方の知識と経験をもっとも効率よく教えてくれるということです。もし事務所に就職できたら、先生方はそういった「知恵」をあなたのために分けてくださっているということをぜひ理解して聞いてほしいのです。少なくとも、「教えるのが当たり前」とは多くの士業は思っていないはずです。 それでも「仕事の内容は上司が教えるのが当たり前」と思うのであれば、独立開業した後、「実務だけ覚えたら早く辞めて独立したい」というスタッフに気持ちよく仕事が教えられるか考えてみてください。おそらく、私が伝えたいことがわかってもらえるはずです。