防災ヘリ喪失の長野県、山火事多い春へ「特別態勢」 知事も協力訴え
「山でたき火をしないで」長野県知事が切実な呼びかけ――。3月5日の墜落事故で唯一の防災ヘリコプターを失った長野県は、17日から4月16日までを春の山火事予防の「特別強化月間」に初めて指定。県、市町村、消防団など全県でパトロールなどに取り組むことにしました。16日の記者会見で阿部守一知事は近隣県や消防庁の協力も求める長野県の苦しい立場を説明。「火事を出さないよう、お彼岸の墓参りの線香の火にも気を付けてほしい」と知事からの異例の呼びかけになりました。 【写真】防災ヘリ墜落、長野県の救難体制に打撃 多くの隊員とヘリ失う
4月16日まで「特別強化月間」
防災ヘリは上空から消火活動ができるため、これまでは春先に多い山火事でも活躍。墜落でそのヘリを失ったことから長野県は「上空からの消火が必要になった場合は他県の応援が必要になる」としています。しかし山林火災への警戒などは他県でも事情は同じ。他県への余分な負担を避けるためにも「徹底した予防、啓発に全県で取り組む」としてこの日の「特別強化月間」の宣言になりました。 期間中は街頭での啓発や山林、果樹園、登山口、墓地、学校周辺などのパトロールに取り組みます。長野県内の消防団員約3万5000人も何らかの形で関与することになりそうです。 山火事の原因は「たき火」が最も多く、長野県では例年原因として10件~30件を占めています。強風などの気象条件で山火事の規模は大きくなりやすく、過去には上田市や岡谷市などで100~300ヘクタール以上も焼いて時には自衛隊も出動し、避難態勢を取ったこともあります。 お彼岸を前に「墓参りの際の線香やろうそくの火、たばこ、野焼きなどが原因になることが多い」と長野県。林業関係者や農業関係者、ハイキングや登山などの観光客、山菜取りや墓参者などに重点的に注意を呼び掛けます。
2011、13年には60件超の山火事
長野県の山火事は2014年に42件(焼失面積1370アール)、2015年は25件(同5687アール)ですが、湿度や気温など気象状況で発生件数も大きく変化。例年20~40件台だった発生が2011年と2013年はいずれも66件と突出、油断できないのが山火事の特徴です。 記者会見で阿部知事は、防災ヘリ事故を受けて15日に県庁で開いた県内自治体の消防長らによる臨時消防長会議で「安全性をしっかり確保してほしいとの意見もあった」と現場に不安とショックがあることを認め、「十分対応していきたい」としました。また、近隣県に協力を求めるとともに、近く消防庁にも出向いて協力を求めるとしました。