“食業”の思いを継ぐ伊豆沼農産の「よそ者」 7人のプロボノと新たな一歩
「よそ者」の目線で生み出す新たな価値
プロジェクト終了から3年後のある日。 裕美さんは当時のメンバー3人に、都市企業向けの「伊豆沼農産流 食・農・体験型 チームづくり研修プログラム」のチラシを渡しました。 プロボノプロジェクトを通して、都市部の企業や企業人が悩んでいることがイメージできるようになり、またその悩みを解決するために伊豆沼農産がどんなことができるのかが具体化された経験を生かし、練りに練った企画です。 伊豆沼地域をフィールドに知識取得・見る・つくる・関係性構築・達成の5つの要素をパッケージ化したもので、参加者は農村の産業化という経営ビジョンの研修や工場見学、ものづくり体験、食農体験ソムリエ認定資格の取得などを通して、伊豆沼の良さを体感して頂くと共に、都市部の企業と農村の新規事業の創出なども考えることができる内容になっています。 今後はより一層、都市部の企業にも積極的な提案をしていくつもりです。 地域を知らない「よそ者」たちは、まるで自分のことのように嬉しく感じています。 チラシを手にしながら微笑むのは、伊豆沼農産のプロボノプロジェクトリーダーの佐藤伸剛さん。「新たな形になって世に送り出されているのは、たまらなく嬉しい」と話します。また「金銭的な報酬はなくても、出会い・ご縁・新たな興味など、非金銭的な報酬に溢れている」と語るメンバーも。 「よそ者ってあまりいい言葉ではないかもしれないけど、よそ者が地方には必要なんだ」と創業者の伊藤さん。「一人で孤独を抱えなくてよかった。社員ではない、でも本当に会社のことを考え、寄り添ってくれる仲間ができた」と、裕美さんも満面の笑みで話します。 伊豆沼農産だけが儲かっても仕方ない。地域全体で元気になっていきたい。 都市と農村をつなぐ人を増やし、訪れる人も迎える地域住民も、みんなが元気になるような伊豆沼モデルを、全国各地の農山漁村に広めていくのが目標です。 地域の人にとって当たり前のことが、「よそ者」の目線を通せば、新たな価値に生まれ変わる。外部のアイデアが水や肥料となり、伊豆沼の地に新しい農村の形を芽吹かせてくれました。
西谷友里