“食業”の思いを継ぐ伊豆沼農産の「よそ者」 7人のプロボノと新たな一歩
創業者の思いを引き継ぐ「よそ者」
創業者の伊藤さんの思いに共感したのが、現社長の妻で、「伊豆沼農産」取締役の佐藤裕美さんです。 佐藤さんは自身のことを「よそ者です」と紹介します。 秋田県秋田市に生まれ、小学生の時に父親の転勤に伴い、仙台に移り住みました。 大学時代に受けたグリーンツーリズムやエコツーリズムの講義をきっかけに、いつかは農業や地域振興に関わることがしたいと思ってはいましたが、一旦は東京都内に広告代理店で働きます。 忙しい都会の生活の中でも農業や農村への思いが消えることはなく、平日は都内で仕事に没頭し、休日は自然豊かな環境に身をおくようになっていました。 そんな裕美さんの心が大きく揺れ動いたのは、2011年3月11日の東日本大震災。 都心の帰宅困難な状況、人々の食料や水の買い占めなどを目の当たりにして、野菜やお米を育て、困っている時はご近所同士で助け合うという田舎の暮らしの良さを思い返します。 「今度こそ農業に関わる仕事がしたい」と、転職活動を開始。 農業法人のほとんどが生産部門の人材募集をしている中で、裕美さんは前職の経験が生かせそうな「企画職」の求人募集を目にします。それが伊豆沼農産でした。 それと同時に、小規模ながらも地域資源を付加価値化し、独自ブランドを構築しながら、1つの作物だけでなく、養豚や稲作の生産、加工、販売と多角化経営をしている点に興味を抱いた佐藤さん。 また地域住民と共に、自立した農村産業を実現したいという、創業者の伊藤さんの思いに心を動かされました。
わざわざ訪れたくなる 伊豆沼農産体験プログラム
佐藤さんが中心となり進めてきたのが「伊豆沼農産体験プログラム」です。地域住民が地域資源の良さを再発見し、それを誇りに思い、お客様を誘客するという考えのもとで実施しています。 これまで東京や仙台などの都市部の子どもたちに、ウインナーやピザ作りなどの手作り体験教室を通して、伊豆沼地域をまるごと体験してもらうパッケージツアーなどを企画。 社員だけではなく、地域住民にも講師になってもらい、体験プログラムの種類を増やしたり、子ども会中心だった体験利用者の層を広げ、企業・団体・旅行会社とも連携を図ったりするなど、広告代理店だった前職の経験を生かして、着実に集客人数は伸びてきたのです。