HPE GreenLakeは“第3章”に突入、無計画に構築されたハイブリッドクラウド解消へ
日本ヒューレット・パッカード(HPE)は、2025年度(2024年11月~2025年10月期)の事業方針説明会を開催した。 【もっと写真を見る】
日本ヒューレット・パッカード(HPE)は、2024年12月12日、2025年度(2024年11月~2025年10月期)の事業方針説明会を開催した。 HPEでは、2024年度に引き続き、「Networking」「Hybrid Cloud」「AI」の3領域に注力して「Edge-to-Cloud」のリーディングカンパニーになるという目標を継続する。Edge-to-Cloudの中核となる「HPE GreenLake」においては、無計画に構築されたハイブリッドクラウドを解消する“Hybrid Cloud by Design”を推進するサービスを、日本市場で拡充していく。 日本ヒューレット・パッカードの代表執行役員社長である望月弘一氏は、「『Edge-to-Cloud』のリーディングカンパニーとして、データ駆動型ビジネスでの変革を支えるパートナーになる」と強調した。 2025年度のテーマは「Unlock ambition」、HPE GreenLakeを中核とした変革支援を継続 2018年に本社CEOであるアントニオ・ネリ(Antonio Neri)氏が発した「データが私たちの世界を動かしている」という宣言を受け、HPEはデータを中心とした戦略に舵を切った。データ活用を前提としたインフラの在り方を見直すべく、「Networking」「Hybrid Cloud」「AI」の3つの注力領域で事業を推進しており、各領域で市場のニーズを補うべく積極的な買収を続けてきた。 注力領域の市場も拡大している。HPEの提案可能領域は、2026年にはNetworkingが2022年比で1.5倍に、Hybrid Cloudが同1.6倍に、AIは同2倍に、それぞれ拡大する見込みだ。2024年度の業績も予想を上回る売上高を達成して、過去最高のキャッシュフローを記録したが、今後も継続した成長が期待できそうだという。 こうした背景を踏まえて、HPEが2025年度のテーマとするのが「Unlock ambition」である。望月氏は、「現行システムの課題解決、新ビジネス立ち上げのためのインフラ構築など、顧客の持つビジョンを支援する(Unlockする)ことをミッションに、日々の事業活動を推進していく」と語る。 さらに、2024年度に掲げた「Edge-to-Cloud」のリーディングカンパニーになるという目標は継続する。ベンダー・クラウドの良いとこ取りでハイブリッド環境を構築できる“第三極のプラットフォーム(HPE GreenLake)”を通じて、ビジネス変革や持続可能な社会に貢献するという事業方針は継続する。 「Networking」「Hybrid Cloud」「AI」領域におけるデータ活用の課題を解決 この事業方針を踏まえて、3つの注力領域でデータ駆動型ビジネスにおける企業の課題を解決するのが、HPEの目指すところだ。 Networking領域における課題は、「いかにデータをセキュアに接続するか」である。その解決策としてHPEは、インテリジェントエッジに必要なセキュアネットワーク接続を提供していく。インテリジェントエッジでは、これまで以上に安全性が重要となり、データの量だけではなく種類も増え、複数のネットワークを統合することが求められる。こうした環境の中で、「ひとつの統合されたエクスペリエンスかつ安全な接続を実現する『HPE GreenLake Network as a service』を用意する」と望月氏。 HPEのNetworkingはカバー領域も広く、ワイヤレスLAN(Wi-Fi)からスイッチング、DCN、SD-WAN、SSE、5Gと多岐にわたる。さらにAI for Networkingで、より簡便で効率化された環境でのネットワーク管理を実現するという。 Hybrid Cloud領域におけるデータ活用の課題は、「複雑なインフラ環境で分散するデータをいかに最適化するか」だ。各企業にはさまざまな理由でクラウドに移行できない領域があり、その結果として生まれた“偶発的なハイブリッドクラウド環境”がデータ分散の要因だという。これに対してHPEは、HPE GreenLakeを中核とした「Hybrid Cloud by Design」、つまり、“設計されたハイブリッドクラウド”を提案していく。 望月氏は、Hybrid Cloud by Designに必要となる要素について、「すべての環境でセルフサービスかつ使用量に応じたコンサンプションモデルで提供できること。クラウドもオンプレミスもすべてが連携して、それぞれでスケールのアップダウンが自由にできること。他社の環境も含め、全体の状況が把握できること。そして、複雑な環境の中で全体最適化ができることだ」と説明する。 そのために、HPE GreenLakeを通じて、コストの予測可能性や透明性、ハイブリッドAI・エッジへの展開、ハイブリッドDevOpsやITOps、セキュリティとコンプライアンスの強化といった、ハイブリッドクラウドに求められる要件を満たしていく。 最後のAI領域における課題は、「データからどれだけ多くのインサイトを導き出すか」だ。望月氏は、「AIへの投資意欲は高いが、横断的にAIを使えている企業は一握り」だと強調する。 HPEでは企業のAI活用を支援すべく、データの取得・準備・管理から、トレーニングやチューニングなどのモデル開発、モデルのデプロイ、それらを支えるシームレスなデータアクセスのためのデータプレーンやAIに最適化されたコンピューティングまで、AIのライフサイクル全体に渡りソリューションを提供する。ハードウェアだけではなく、ソフトウェアやサービスまで揃えていることが強みだとう。 そして、ここまでの3つの領域のすべてのハードウェア、ソフトウェア、テクノロジーが具備されており、データ駆動型トランスフォーメーションの実現を担うのが、HPE GreenLakeである。 第3章に突入したHPE GreenLakeを、パートナーも含めた「One HPE」で ここまでの事業方針に対する、日本市場における施策としては「One HPE」を掲げる。昨年度は、HPE内の各部署で共通のゴールを目指すという「Journey to One」を掲げたが、さらにパートナー企業も含めて事業を推進していくという思いが込められている。 その上で、注力していくのが「Edge-to-Cloudサービスの拡充」だ。Edge-to-CloudのプラットフォームであるHPE GreenLakeの歴史を振り返ると、2019年に“Everything as a Service”としてすべてのハードウェアやソフトウェアを従量課金で提供すると打ち出したのが第1章、その後、ベンダー・クラウドニュートラルを進めたのが第2章になるという。そして、第3章として、前述した「Hybrid Cloud by Design」により企業のビジネス変革を推進していくという。 Hybrid Cloud by Designを加速するソリューションとして、AIを多くの企業に利用してもらうための「Enterprise AI」やハイブリッドクラウド環境を手軽に利用するための「サービスカタログ」、KVMをベースとしたVMware代替の仮想化ソフト「HPE VM Essentials」、機密性の高い情報を扱う企業向けの「disconnected環境」などを日本でも展開していく。 加えて、パートナー企業との連携も強化していく。まず2025年度から、HPEのコンピュート・ストレージにおけるパートナーセールスとHPE Arubaのパートナーセールスをひとつのチームとして統合。また昨年度は、GreenLakeサービスをパートナー企業に開放することで、新規獲得の大部分をパートナー経由で得るという成果を得たが、さらにHPEのハードウェアやソフトウェア、サービスのアセットとパートナーの独自ソリューションを組み合わせる、ソリューションセリングを強化していく方針だ。 企業のAI活用をシンプルにするNVIDIAとの包括ソリューションも また、説明会ではNVIDIAの日本代表兼米国本社副社長である大崎真孝氏がビデオ登壇。2024年6月に発表された「NVIDIA AI Computing by HPE」について触れた。 NVIDIA AI Computing by HPEは、NVIDIAのAIコンピューティング技術とHPEのサーバー技術やサービスを融合させた、企業の生成AI導入を支援するための包括的なソリューションだ。「リファレンスアーキテクチャーではなく、実際のソリューションとしてターンキーで(すぐに利用できる状態で)提供されるのが特徴」と望月氏。 NVIDIAのAIモデルの推論環境を効率的にデプロイするための「NVIDIA NIM」や企業向けソフトウェア、GPUなどが、HPEのプライベートクラウドのアセットと統合された形で提供され、企業のAIワークロードに合わせた4つのサイズが用意されている。 大崎氏は、「NVIDIAのプラットフォーム戦略を推進において、HPEとの協業は極めて重要。一般的にAIシステムは従来のITシステムと異なる点が多く、多くの企業でノウハウが蓄積されておらず、導入のハードルが高い。こうした課題に対して、NVIDIAのプラットフォームとHPEの製品やサービス力を組み合わせることで、あらゆるユーザー企業が最先端のAIインフラやサービスを活用できる環境を実現できる」とコメントを寄せた。 文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp