食品値上げ、10月まで6万品超 業界は依然対応に忙殺
多くのメディアなどで2024年の食品値上げ数は1万数千品と見通しが報じられているが、それを大幅に上回る市場実態が大手食品卸の価格改定実績から浮かび上がった。酒類や食品を幅広く取り扱う国分グループ本社が今年1~10月に価格改定作業を行った商品マスター(商品コードや価格、荷姿など流通に必要な情報項目)の件数は6万件を超え、記録的な値上げラッシュとなった一昨年の同期に比べ3割程度の減少という。11月以降も大型カテゴリーを含むメーカーの価格改定の発表が相次いでおり、来年も食品業界が値上げ対応に追われる状況は続きそうだ。
大手卸の商品マスター変更件数から値上げ実態が浮き彫り
メーカーの値上げに伴い、国分が今年1~10月末にマスター変更を行った件数は6万0347件。主な内訳は加工食品、菓子、低温・冷凍で構成する食品カテゴリーが4万5799件、ビール・ビアテイスト含む酒類カテゴリーが1万4047件となっている。 今年は昨年に比べ、価格改定を行うメーカー数が半減したとされるが、「値上げ数の多さはここ数年と変わらない印象で、現場の肌感覚では価格改定作業が落ち着いた実感がない」(複数の食品卸)との声も聞かれる。10月末時点で6万を超えた国分のマスター変更件数は、その裏付けになる数字といえそうだ。 なお未曽有の値上げラッシュとなった22年の同社の商品マスター変更件数は、12万8667件の膨大な数に上った。今年の6万件超の推移はそれに比べると半減したようにみえるが、22年度は10~12月だけでも5万品を超える値上げ件数が発生したため、「一昨年比でみれば、今年10月までの価格改定数は3割減程度の推移か」(国分)ととらえている。 昨年来の原料・資材高、為替影響などの継続に足元の物流費や人件費の上昇が重なり、10月も飲料や菓子、酒類、ハム・ソーセージなど多くのカテゴリーが値上げを実施。11月以降、ビールや食パン、コメ関連商品などが来年1~4月からの価格改定を相次ぎ発表するなど、食品値上げは落ち着く気配がない。 これまで食品業界は値上げ効果で販売数量の減少をカバーしてきたが、節約志向の進行でその構造にも変化が生じてきた。25年も食品値上げの動きに歯止めがかからない中、業界各社は膨大かつ煩雑な価格改定作業の遂行はじめ、量の回復も見据えた需要喚起策の投入など、引き続き厳しい対応を迫られそうだ。
日本食糧新聞社