家電のIT化が生み出す脅威、「自宅が乗っ取られる時代」は来るのか
自宅の防犯を考えるように、ネットワークの安全対策を
山本さんは、「ネットワークで繋がっているモノの価値、デジタル化されている情報や財産の価値は個人が思っている以上に大きい。タンスの金庫がデジタル化したものだと考えるといいかもしれません。家庭の玄関の戸締まり、空き巣対策を考えるように、ネットワークの“防犯”も真剣に考えて欲しいですね」と語ります。今後、ネットワークへの不正アクセスなどネット犯罪は更に巧妙化し、ユーザーが気づかないうちに犯罪を完了させるケースも増えていくといいます。 「最近の事例では、インターネットプロバイダの提供しているルーターがサイバー攻撃によってアクセス障害を起こしたことがニュースになっていましたが、それは主に“攻撃が失敗している”ケース。犯罪者は気づかれることなく犯罪を進めたいと考えています」(山本さん)。 ただ、ネットワークへの知識がない人にとって、ネットワークの防犯を確実に行うのは簡単ではありません。山本さんも「個人の知識レベルによって、できることには限界がある」と語ります。まずは、家庭用ネットワーク全体を監視して不正アクセスなどをブロックするソフトウェアを導入することが重要だと言えるでしょう。 ただ、パソコンやスマートフォンのセキュリティソフトがメーカーの努力などによって一般的になるまで長い時間を必要としたように、家庭用ネットワークのセキュリティ対策を普及させるのは簡単ではありません。山本さんも、「わかりやすく伝えることも大事だが、習慣づけることはとても難しい」と語ります。 例えば、パソコンやスマートフォンを製造・販売するメーカーがセキュリティソフトの導入を推進してきたように、ネットに接続する様々な機器を作り、提供するメーカーが不正アクセスなどの脅威に対して高い意識を持ち、家庭用ネットワークのセキュリティ対策を啓発していくことも、今後の大きな課題といえるのかもしれません。IoT、スマート家電、スマートスピーカーなど、インターネットを活用する手段が多様化したことで、ネットセキュリティが大きな転換点を迎えているのです。 (取材・執筆:井口裕右/オフィス ライトフォーワン)