家電のIT化が生み出す脅威、「自宅が乗っ取られる時代」は来るのか
自宅のネットワーク、“玄関”はどこにあるのか?
こうしたネット機器を自宅で使用する場合、インターネットは自宅内に設置されている無線LANルーターを通じて提供されます。これまで、パソコンやスマートフォンだけを接続していた場合には端末側でウイルスなどの不正プログラムの侵入を防ぐためにセキュリティ対策を講じてきましたが、接続できるネット機器が多様化したことで、セキュリティの在り方が大きく変わっているようです。 「自宅に設置されている無線LANのルーターは、いわばネットワークの“玄関”。そこを突破されると、家庭内のネット機器は不正アクセスなどの脅威に対して無防備の状態だと言えます。ネット機器のセキュリティだけでなく自宅内ネットワーク全体のセキュリティを考えるべきでしょう」。 そう話すのは、ソフトバンク傘下でソフトウェアの販売代理などを行うBBソフトサービスのシニアエヴァンジェリストである山本和輝さん。同社は、横浜国立大学と共同で家庭用ネット機器のセキュリティに関する研究を行っているほか、ルーマニアBitdefender社との協業による家庭用ネットワークセキュリティサービス「SECURIE HOME powered by Bitdefender」などを展開しています。 一般的に、パソコンやスマートフォンのセキュリティは、コンピューターウイルスの侵入や不正アクセス、乗っ取りなどの被害を防止するために機器そのものにセキュリティソフトを導入して防御しています。しかし、同じネットワークにネット家電、ゲーム機、スマートスピーカーなど様々な機器が接続された状態では、ひとつひとつの機器にセキュリティ対策を講じるのは効率的とは言えず、またパソコンやスマートフォンのようにネット上の様々な脅威に対応することができない機器も存在します。そこで、すべてのネット機器がつながり、外部のインターネットとの接点となる無線LANルーターを“自宅ネットワークの玄関”と捉え、セキュリティ対策を考えるべきだというのです。 「無線LANルーターを乗っ取ることは、自宅のネットワークを乗っ取ることと同じ。これまでネット犯罪といえば企業を狙うイメージが強かったですが、最近では家庭のネットワークも世界中のネット犯罪集団から狙われています」と山本さんは説明します。BBソフトサービスと横浜国立大学が行った共同研究では、大学内に作った家庭用ネットワークに毎日平均で2万件前後の不正アクセスの試みがあったそうで、それだけネット上には家庭用ネットワークをターゲットにした悪意が存在していると考えるべきでしょう。