MotoGPマシンにMoto2王者・小椋藍が初乗り なぜホンダではなくアプリリアで挑戦するのか?
【MotoGPマシンに初めて乗った印象は?】 さらに青木は、小椋のスタイルを〈雑草根性〉とも表現する。 「ライダーは誰しも、いつも成績のいい時ばかりではないし、低迷するとそのまま落ちていく人も珍しくない。小椋はシーズン中にケガをしたり成績が伸びなかったりしたこともあるけれども、そこからちゃんと這い上がってきた。踏まれても踏まれても立ち上がってくるあの雑草根性は、今どきには珍しい〈昭和の匂いのするライダー〉だとも思います」 青木が指摘する点と同様のことを、小椋が2025年に所属するチームマネージャーのダビデ・ブリビオは、〈巻き返す力(resilience)〉と端的に言い表わす。 「後方からでもあきらめずに走ってトップに上がってくる。その〈巻き返す力〉は彼の資質の話で、性格的な面でいえば、日本人は我々ヨーロピアンとは少し文化が違うけれども、藍の場合は若くてもすでに世界中を旅してヨーロッパのスタッフたちと一緒に仕事をする経験も豊富なので、いわば日本とヨーロッパの中間的存在、といってもいいでしょう。 スペイン人やイタリア人のように賑やかな性格ではないけれども、それはシャイとか人見知りというよりも、謙虚(discreet)なのだと思います。楽しい性格だし、ジョークも好きだし、英語も上手だし、いい面をたくさん持っている人物ですね」 今回の2025年向けテストでは、小椋は誰よりも多い86周を走り込み、ラップタイムはアプリリア勢のトップから1.087秒という差だった。MotoGPマシンに初めて乗った印象については「特に何も(予断や余計な思い込みなどを)考えていなかったので、『こんな感じなんだ』って思いました」と、それまで同様に淡々とした調子で話した。 現代のMotoGPマシンは、空力を最大限に活用するエアロパーツがふんだんに取りつけられており、スタート時やコーナー出口などでバイクの姿勢を制御するデバイスなどの扱いにも慣れていかなければならない。Moto2時代には経験していないこれらの操作や順応について訊ねた際も、小椋らしい冷静な言葉が帰ってきた。 「コーナー進入と立ち上がりのふたつに分かりやすくわけて考えると、特に進入の部分ではタイヤやバイクについてまだわかっていないことだらけなので、最後のもうちょっとの部分にはまだ踏み込めていないし、立ち上がりでもスピン(の対処)やバイクをあまり暴れさせないことなど、やることがいっぱいあるので、すべてをよくしていくしかない。だから、特にどこが課題、みたいものはなかったですね」