母は70歳まで働き続けるようなのですが「収入をいくらにおさめよう」と悩んでいました。稼ぎすぎると何かあるのですか?
定年退職後も、再雇用や再就職といった方法で働き続ける人は多くいます。健康面などを考慮して無理のない範囲内で働くにしても、できる限かぎり稼ぎたいと考える人もいるでしょう。 しかし、働くにしても稼ぎすぎると、何らかの影響を与えるかどうかを理解していない人も多いのではないでしょうか。特に老齢厚生年金をもらいながら働く場合は、一定の要件に該当すると年金が支給停止になる場合があるので注意が必要です。 そこで本記事では、70歳まで働き続ける際に稼ぎすぎると何が起こり得るのかについて解説します。 ▼65歳から70歳まで「月8万円」をアルバイトで稼ぐと、年金はどれだけ増える?
厚生年金の加入義務は70歳まで
勤務先が強制・任意問わず適用事業所となっており、常時雇用されている70歳未満の従業員は、厚生年金に加入する義務があります。日雇い労働者など、労働期間が短かったり、所在地が一定しない事業所で働いていたりする場合は、厚生年金の加入要件を満たしません。 ただし、1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数が短いパート・アルバイトでも、1週間の所定労働時間または1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、かつ以下に該当する人は厚生年金に加入できます。 ・週の所定労働時間が20時間以上ある ・月額賃金が8万8000円以上である ・学生でない
老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額によって年金が支給停止となる場合がある
60歳以降も働いて老齢厚生年金を受け取りながら、厚生年金に加入できます。しかし、在職老齢年金によって、収入次第で年金が支給停止になる場合があるので注意が必要です。 在職老齢年金によって、年金の一部または全額支給停止となるのは「老齢厚生年金の基本月額」「総報酬月額相当額」の合計が50万円を超えた場合です。 ・老齢厚生年金の基本月額:老齢厚生年金の月額(加給年金額を含まない) ・総報酬月額相当額:1ヶ月あたりどのくらいの給与をもらっているかを表す額(その月の標準報酬月額と直近1年の標準賞与額の合計を12で割った額) 在職老齢年金による年金支給月額は、「老齢厚生年金の基本月額-(老齢厚生年金の基本月額+総報酬月額相当額-50万円)×1/2」にて計算してみてください。 収入によって年金が減額すると、老後の生活費を確保するのに大きな影響を与えるでしょう。定年退職後も働き続ける場合は、在職老齢年金の制度によって年金が支給停止とならない働き方を考えなければなりません。 ■実際に支給停止になる人の割合は低い 在職老齢年金の制度によって年金が一部または全額支給になる人は、決して多くありません。厚生労働省の「年金制度の仕組みと考え方」では、実際に支給停止の対象となったのは、65歳以上の在職している年金受給権者248万人中41万人(17%)とのことです。