『明日カノ』作者、新連載はリアル路線からの脱却 情報収集はSNS…女性の悩み描く理由
■未来を見据え、あえて『明日カノ』とは異なるジャンルにシフト
待望の新連載が決まるまでの過程には、「本連載まで行きそうになったネタがボツになっていて(笑)。取材までしたのですが、どうしても1話が描けなかった。自分の中でビジョンが見えず気後れした部分がありました」と苦悩があったことを明かす。 その後、担当編集とコミュニケーションを重ね、「どうしようと話す中で、お互いに『それ、いいね!』となって肉付けしていきました。『明日カノ』と違って、今回の方は話がわかりやすく大筋で決まっています。ストーリーが決まってキャラが決まって、連載前の打ち合わせ最後の方は実際に描きながら、テーマについて担当さんと話し合いました」と経緯を説明する。 試行錯誤の末に決まったジャンルはガールズサスペンス。前作と異なる路線への挑戦には、自身のチャレンジ精神と担当編集の「リアル路線しか描けない漫画家にはなってほしくない」という想いが込められている。 「私自身は『明日カノ』がリアル路線だったので次描くときもリアルに描かなきゃと気負っていました。前作はおかげさまでヒットしましたが1作目。だからこそ2作目で実験的なことを取り入れて可能性の幅というか引き出しを広げてほしい。リアルから外した展開を入れないと自分の首が締まるだけと担当さんに言われて納得し、決断しました」。 ■キャラクターに自分の想いを話させるのは「違う」 新たなジャンルに挑戦しつつも『明日カノ』でも描かれた“らしさ”も健在。特に第1話でモモがショッピングモールで同級生と遭遇した際にかけられる言葉は、多くの人が抱える悩みを象徴するかのようなセリフで印象的だ。 「年齢とか性別関係なく、モモより長く生きている私でもたまにあるように、同じような気持ちになるときは他の人にもあるのではと思って描きました」と意図を説明する。 強めのセリフを描く際の心構えについて「このキャラだったらこう思うというのを指標にしています。自分が思っていることをキャラに言わせるのは、私の中でまた違って。例えば同じ想いを抱えていたとしても、このキャラだったらこう言うかもと考えて描いています」。 モモの憧れとして登場するイチカは、モモとの対比とも根っこの部分ではモモと同様の悩みを持つとも、いずれにも捉えられる描き方がされている。「イチカはイチカで同じような悩みだってあると思う。モモは置かれている状況が違うから『きっと私とは違う』と思うかもしれないですが、イチカだって孤独を感じることもあると思いながら描いています」と口にする。 続けて、「今のところは多分イチカの方が描きやすいのかなと。重なるじゃないですけどわかる部分を多く描けるのはイチカな気がするという予想です。ただモモはモモで共感できるシーンもあるので、実はどっちもどっちなのかなとは思います」。