糖質制限ダイエットは絶対やってはいけない3つの理由…医師が解説する“納得”しかないその根拠
炭水化物は減らしすぎると不健康になる
実際に、炭水化物の摂取量と死亡率の関係を評価してみると、U字の関係にあることが分かっている。つまり、炭水化物の摂取量は多すぎても少なすぎても不健康になってしまうということを意味している。 この研究をもう少し詳しく見てみると、動物性のたんぱく質・脂質の摂取量が多い人においては、糖質制限ダイエットをしている人の全死亡率、心筋梗塞などによる死亡率、糖尿病の発症リスクが高いという結果であった。 一方で、植物性のたんぱく質・脂質の摂取量が多い人においては、逆に糖質制限ダイエットをしている人の全死亡率、心筋梗塞などによる死亡率、糖尿病の発症リスクは低いという結果であった。 人は食べないとお腹が空いてしまうので、食事の量を単純に減らすということは難しい。何かの摂取量を減らすと、その代わりに何かほかのものを食べることで空腹にならないようにする傾向があるのだ。 糖質制限ダイエットをしている人の中には、肉などのたんぱく質の摂取量を増やすことで満腹感を得ている人も多いが、肉は食べすぎると大腸がんのリスクを増やしてしまうなど健康に悪影響がある。 そもそも、不溶性の食物繊維が豊富に含まれる「茶色い炭水化物」の摂取量が減ること自体も、大腸がんのリスクを上げる原因になる。見た目がスリムになれるのであれば大腸がんのリスクが上がってもよいと思っている人は少数派だろう。 多くの人は、このような「諸刃の剣」のダイエット法ではなく、がんのリスクを上げることなく痩せたいと思っているはずだ。 そこで「茶色い炭水化物」の出番である。白い炭水化物を茶色い炭水化物に置き換えることで、健康に良い効果があるだけでなく、ダイエットになることも研究結果から分かっている。
糖質制限ダイエットはリバウンドする
糖質制限は比較的すぐに減量を実感できるので、良いと信じている人が多い印象がある。しかし、そもそも糖質制限ダイエットによる減量効果は一時的であり、長期的に維持することが難しいことはあまり知られていない。 炭水化物の摂取量を控える糖質制限と、脂質の摂取量を控える低脂質ダイエットを比較した研究がある。その結果を見ると、たしかに6か月までの短期的な追跡においては、糖質制限ダイエットに軍配が上がることが分かる。 しかし1年経つと、この2つのグループの間での違いはほぼなくなってしまった。 さらにデータを見てみると、1年後の段階で両群とも約4割の人は継続できず脱落していることが分かる。つまり、糖質制限ダイエットは長期的に続けることが難しい食事法と言える。 糖質制限ダイエットは、低脂質ダイエットと比べて副作用も多い食事法だ。やはり不溶性の食物繊維の摂取量が減るので、約7割の人が便秘になり、6割の人が頭痛を経験すると報告されている。 多くの副作用のあるダイエット法なのである。これらを総合的に判断すると、糖質制限ダイエットは医学的にはあまりおすすめできない食事法であると言っても良いだろう。 図/書籍 津川友介著『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より 写真/shutterstock 参考論文 *Seidelmann SB et al. Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis. Lancet Public Health. 2018;3(9):e419-e428. *Samaha FF et al. A Low-Carbohydrate as Compared with a Low-Fat Diet in Severe Obesity. N Engl J Med. 2003;348(21):2074-2081. *Foster GD et al. A Randomized Trial of a Low-Carbohydrate Diet for Obesity. N Engl J Med. 2003;348(21):2082-2090. *Yancy Jr. WS et al. A Low-Carbohydrate, Ketogenic Diet versus a Low-Fat Diet To Treat Obesity and Hyperlipidemia: a randomized, controlled trial. Ann Intern Med. 2004;140(10):769-777.
---------- 津川友介(つがわ ゆうすけ) 東北大学医学部を卒業後、ハーバード大学で修士号、博士号を取得。聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。著書に10万部超のベストセラー『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』、『世界一わかりやすい「医療政策」の教科書』、共著に『「原因と結果」の経済学』などがある。 ----------
津川友介