損をしない年金・退職金の受け取り方とは?老後のお金対策の第一歩は、優遇制度を知ることから
◆【年金】に関する制度 年金受給で重要なのは、「何歳からもらうか」という選択。原則は65歳からの受給ですが、60歳~75歳の間で選ぶことができます。 65歳より後に繰り下げて受給すると、受給額は月0.7%ずつ増額。65歳から受給開始した人と、70歳から受給開始した人を比べた場合、後者の受給総額が上回る年齢は81歳です。ですから、長生きすればするほど、70歳から受け取ったほうが得になります。 ただし年金額が多くなれば税金や健康保険料も高くなるため、単純計算では判断できません。年金制度の仕組みは複雑ですから、ケースごとの注意点や損をしない裏技などをお伝えしていきます。 65歳以降も働き、高額な給与を得ながら年金をもらう場合は、年金の繰り下げ受給を検討したほうがよいでしょう。なぜなら、給与や賞与と年金の合計額が月48万円を超えると、超えた分の半分の老齢厚生年金がカットされてしまうからです。繰り下げしない場合は、働き方を調整して給与所得を減らすのも手。 昭和41年4月1日以前に生まれた女性(男性は昭和36年4月1日以前)は、65歳になる前に「特別支給の老齢厚生年金」をもらえます。支給開始は生年月日に応じて、60歳~64歳に限られるので、よく確認してください。 受給開始年齢到達の3ヵ月前に日本年金機構から年金請求書が届きます。申請しないともらえないので忘れずに。
◆【退職金】に関する制度 退職金は、税金対策によって数十万、数百万単位で手取り額が変わることがあるため、手取りを増やすためには、非課税枠をフル活用しましょう。 退職金の所得控除額(退職所得控除額)は、勤続年数が20年以下の場合「40万円×勤続年数」、20年超なら「40万円×20年+70万円×(勤続年数-20年)」で計算します。たとえば勤続年数40年の人は、2200万円までが非課税枠になる計算です。 退職金の受け取り方には、「一時金」と「年金型」があります。一時金で受け取る場合、先の計算で出した退職所得控除額の範囲内に退職金が収まれば税金はゼロ。社会保険料もかかりません。 一方で年金型は、公的年金と合わせて所得として計上されるため、所得税が発生し、社会保険料の負担も大きくなりがちです。退職所得控除の範囲内か、少し超えるぐらいの退職金ならば一時金で受け取ったほうが得でしょう。 退職金が高額な場合は、一部を年金型で受け取るほうが有利なケースもあるので、税理士など専門家に相談を。 確定拠出年金の受け取り方は退職金と同じですが、受け取り期間は年金と同様で、基本60歳~75歳の間で選ぶことができます。 そのため、会社の退職金制度に「確定拠出年金」がある場合、退職一時金と確定拠出年金の合計額が退職所得控除額を超えてしまうようであれば、退職一時金を受給した年を避けるのが得策。翌年以降に受け取るよう調整しましょう。同じ年度に受給すると、合算されて所得税が高くなってしまいます。 なお、自営業者で、個人型確定拠出年金(iDeCo)と小規模企業共済の両方に加入している場合も同様です。 (構成=村瀬素子)
板倉京
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