焼肉界のレジェンド「炭火焼肉 なかはら」店主がこよなく愛する和食の店4軒
そんな中原氏が焼肉の世界に入ったのは今から23年前、妻の実家が三ノ輪で営んでいた焼肉店「炭火焼七厘」を、経営立て直しのために20代半ばで継いだことに始まる。
「初めは相手にされなかった」という芝浦の食肉市場に通い詰め、包丁の持ち方、肉のさばき方や切り方などを人一倍の努力で身につけ、店を成り立たせる経営を肌で学び、食肉業者から一頭買いを勧められ現在のような「お任せコース」を確立。後に三ノ輪の店を連日満席の人気店へと押し上げ、市ヶ谷への移転を機に「炭火焼肉 なかはら」を誕生させた、愚直な努力の人である。
「当時は日本でBSEが流行った時期でもあり大変でしたが、未経験だったからこそ変えたいと思った慣習を改正できたり、誰もしていないことにチャレンジできたというのはありますね。いい業者さんに知り合い一緒に試行錯誤を繰り返し、寿司・焼き鳥・フレンチといった様々なジャンルのシェフとお話しさせていただき、さまざまな発見もありました。そしてたくさんのお客様に育てられ、今の形があると思っています」と来し方を振り返る。
スペシャリテは「幻のタン」と「ヒレカツサンド」
厚さが0.2ミリ違うだけで、カットの方向がほんのわずか違うだけで、味も食感も全く変わってしまうという焼肉。「こう切ってほしい」という肉の声を聞きながら、スライサーは使わず肉の温度も加味した手切りにこだわるのが中原流だ。
「昔は、一皿に肉のよい部分とそうでない部分が混ざっていて、不公平感が生じてしまうことがありました。僕はそこを変えて、お客様全員が感動するような最高のレベルの焼肉を楽しんでほしいとの思いからスタートしました。それだけにかなりの原価率がかかってしまいますが、少しでもお安く提供したいと考え、お席の2部制を導入させていただいています」と中原氏。
そんな「炭火焼肉 なかはら」のスペシャリテとなるのが、タン元・タン先・タンゲタの3種盛りを味わう「幻のタン」だ。分厚くカットされたタン元はさっくりとした歯ごたえが、薄くカットされたタン先は肉の深い味わいが、中原氏が使い始めたというタンゲタは、備長炭を用いた炭火で一気に焼き切って提供され、かめばかむほど深いうまみが楽しめる。