焼肉界のレジェンド「炭火焼肉 なかはら」店主がこよなく愛する和食の店4軒
自分で焼くと焼きムラが出たり、焼きすぎて硬くなったり、もっともおいしいタイミングを逃しがちだが、中原氏をはじめ、肉のプロであるスタッフが一枚一枚ていねいに焼き上げてくれるので、どの肉も最高の仕上がりで味わえる。厚切りのタン元の表面はカリッと香ばしく、中心部はほどよいピンク色だが芯までしっかり熱が入っており、レモンと黒七味が肉のうまみを引き立てる。
もう一つのスペシャリテ、店の名物料理として知られるのが「ヒレカツサンド」だ。肉厚のヒレカツをサックリこんがり焼き上げた食パンでサンドした逸品で、カリッとした衣とジューシーなヒレのハーモニーも絶妙だ。
「牛かつは関西にもありますから僕が考案したわけではないのですが、『炭火焼七厘』のときに、ヒレのよさを際立たせるために揚げたのが始まりです。お客様は見栄えがいいとおっしゃいますが、見た目や形よりもヒレに対して一番よいアプローチになっていると自負しています」と中原氏は話す。
チョイスができてお代わり自由の〆でフィナーレ
オリジナルのお任せコース3種から選択するシステムの「炭火焼肉 なかはら」。その中で、中原氏が「お客様がチョイスする楽しみを」とこだわるのが、コースのフィナーレとなる〆だ。
「お肉はこちらで決めさせていただいている分、〆はプレーンな牛丼、卵黄をかけた牛丼、冷麺を味わっていただき、気に入ったものはお代わり自由でご提供しています」と中原氏。おなかも心も満足する満足度の高い〆である。
自分の舌と手を信じて職人の使命を果たしたい
日本における焼肉は、戦後の食糧難の時代に在日朝鮮人が始めたホルモン屋台、カルビや内臓肉などを出す食堂をルーツに、黒毛和牛など日本のフレーバーが加わり、現在の焼肉文化を形作ったといわれている。中原氏は言う。「韓国に和牛はありませんでしたし、キムチは日本にはなかったものですよね。韓国と日本、その中間に位置するのが日本の焼肉です。このオールドスタンダードを崩さずに、高級すぎないジャンルでこの先も長く継承していくこと、これも僕に課された使命と感じています」