高校サッカートップを驚愕させた15歳の久保建英。「日本を背負って立つ」
スタンドは鹿島アントラーズ、浦和レッズに共通するチームカラーのレッドにほとんど染まっていない。静寂に支配されているからこそ、見ている側の虚を突くシーンが訪れたときのギャップが大きい。 午前中の日産スタジアムに足を運んだ1万4214人のファンやサポーターが、前後半で4度を数えたゴールシーン以外で一番大きなどよめきをあげたのは後半14分だった。 18日に行われた、シーズンの幕開けを告げるフジゼロックス・スーパーカップ。その前座としてU‐18Jリーグ選抜と日本高校サッカー選抜が対峙した、35分ハーフのネクストジェネレーションマッチ。前者に飛び級で招集されて、先発フル出場した15歳の中学3年生、FW久保建英(FC東京U‐18)が魅せた。 右サイドでボールを受けた背番号13が、相手ゴール方向へ向けて振り向いた直後だった。利き足の左足から放たれた矢のようなスルーパスが、前線に走り込んだFW中村駿太(柏レイソルU‐18)の足元に、オフサイドぎりぎりのタイミングで寸分の狂いもなく入った。 2点のビハインドを背負ったU‐18Jリーグ選抜が迎えた絶好のチャンスは、ゴールに至らずにタメ息へと変わった。U‐19日本代表が初めてアジアを制した、昨秋のU‐19アジア選手権にフィールドプレーヤーでは最年少の17歳で招集され、2ゴールをあげた中村が反省しながら振り返る。 「狙いすぎたというか、考えすぎてしまった。(久保)建英が左足でボールをもって前を向いたときに、いい動き出しをすれば絶対にいいパスが出てくるし、チームとしてもチャンスになるので常に意識していたんですけど」 試合は正月の全国高校サッカー選手権を制した青森山田の黒田剛監督が率い、同校の選手4人が先発に名前を連ねた日本高校サッカー選抜が4‐0で快勝した。それでも、後半32分までゴールを守った守護神・廣末陸は、相手のオフサイドが5度を数えた点に少なからず警戒心を抱いていた。その視界には、幾度となくラストパスの出し手を担った久保が奇異に映った。 「すごく狙いにくかったというか、どこで出してくるのかがわからない、という場面が多くて。パスのタイミングだけでなくドリブルのテンポも、他の日本人とはちょっと違う、という印象が強いですね。味方が(ボールを)取った、と思った直後にもうワンタッチ、ツータッチと細かく入れてきたりして。なので、どうしても(味方は)足を出してしまう。そこ(密集)ではがせるのは、すごいことだなと思いました」 ボール離れで独特かつ素早いタイミングと幅広い視野をもっているからこそ、相手だけでなく味方の虚をも突くのだろう。